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文献名1霊界物語 第81巻 天祥地瑞 申の巻
文献名2第1篇 伊佐子の島よみ(新仮名遣い)いさごのしま
文献名3第5章 心の禊〔2032〕よみ(新仮名遣い)こころのみそぎ
著者出口王仁三郎
概要
備考
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あらすじ
アヅミ王以下重臣たちは、高鉾の神・神鉾の神の御宣旨に感激し、百日の修祓に取り掛かろうと、今度は山麓を流れる駒井川に集った。

駒井川の水はとうとうとして壮観な勢いを見せていた。一同は川中の巌に陣取り、日夜心力を尽くして禊の神事に仕えていた。

国津神たちは禊の祈念に余念なく取り組んでいる折しも、突如、上流から半死半生となって助けを求めながら流れ落ちてくる、一人の男があった。

国津神たちがよく見ると、それはかねてから敵と狙う、サール国王エールスに他ならなかった。アヅミ王はとっさにわが身の危険も忘れて激流に飛び込むと、エールス王を川州に助け上げ、介抱を始めた。

王以外の神々はこのときばかり恨みを晴らそうと、おのおの石を掴んでエールスを打ち殺そうと集まってきた。アヅミ王は右手を差し上げ、罪はわれわれの心にあったのであり、エールスといえども神の子、乱暴してはならないと一同を制した。

エールス王はアヅミ王の介抱により正気を取り戻すと、回りを見回して、助けてくれたお礼を言うどころか、自分の禊を邪魔したと言って、アヅミ王一同を非難した。

王妃、大臣以下の神々は怒ってエールス王に襲いかかろうとした。アヅミ王は一人必死に一同をなだめて回ったが制しきれず、王以外の神々はいっせいにエールス王に石を投げつけた。

すると不思議なことに、エールス王の姿は煙となって水中に消えてしまった。一同が茫然としていると、水中から大きな蛟竜が現ると、神鉾の神の化身であると自らの正体を明かした。

そして、アヅミ王の心は禊を終わり、大神の大御心にかなったことを告げた。また王妃以下大臣たちはまだ心の修行が足りず、改めて百日の修祓に仕えるべきことを宣言した。そして、山の神殿には神鉾の神が御霊を止めることを託宣した。

ここにアヅミ王は三日の禊によって許され、月光山の神殿に奉仕し、国政を司ることを得た。王妃以下大臣たちは改めて百日の荒行を命じられ、その後月光山の神殿に仕えることを許された。
主な人物 舞台 口述日1934(昭和9)年08月04日(旧06月24日) 口述場所伊豆別院 筆録者森良仁 校正日 校正場所 初版発行日1934(昭和9)年12月30日 愛善世界社版 八幡書店版第14輯 447頁 修補版 校定版99頁 普及版 初版 ページ備考
OBC rm8105
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本文  アヅミ王以下の国津神等は高鉾の神、神鉾の神の御宣示により感激し、七日七夜の禊を修し再び百日の修祓に取りかからむと、今回は月見ケ池の聖場を離けて、山麓を流るる駒井川の清流に修祓式を行ひにける。駒井川の水は滔々として蒼く流れ、川中の巌を噛みて立ち上る飛沫は霧の如く日光に映じ、宛然白銀の錦を散らせし如く、その壮観さ目も眩むばかりなりける。一同は川中の大巌の上に起立し、或は端坐し、日夜心力を尽し、禊の神事に仕へ奉りける。
 アヅミ王は歌ふ。
『月見池七日七夜の禊さへ
  吾魂の垢は取れなく

 大神の大御言葉に省みれば
  身体霊魂は未だ清まらず

 速川の滝津瀬聞けば物凄し
  高鉾神の御声にも似て

 魂を打ち叩かるる心地かな
  駒井の川の滝津瀬の音は

 速川の中に峙つ巌ケ根に
  吾立ち居れば水煙立つも

 駒井川速瀬に立ちて身体を
  洗ふ禊の勇ましきかも

 川底の真砂の白も見えぬまで
  水蒼みたる深き流れよ

 駒井川深き流れの底よりも
  なほまさるらむ吾身の汚れは

 月光山聖所に城を構へつつ
  吾曇りたる心を嘆かふ

 嘆くべき時にはあらじ吾魂を
  清めてイドムの城をかへさむ

 形ある宝に心引かれつつ
  吾魂の曇りを恐るる

 さはいへど親の賜ひしイドム城
  やみやみ人手に渡すべきかは

 月も日も流るる駒井の川水に
  吾魂の垢を洗はむ

 勇ましき駒井の川の水音は
  吾魂を蘇らすも

 山と山に包まれ流るる駒井川の
  水澄み切りて冷え渡るなり

 大魚小魚あまた集へる谷川に
  禊し居れば足こそばゆき

 吾足を魚族来りつつくらし
  未だ身体の垢の取れずや』

 ムラジ姫は汀の浅瀬に立ちながら、半身を浸し静かに歌ふ。
『心地よき流れなるかな吾魂は
  この水音に洗はれにける

 洗へども身体霊魂の汚れをば
  完全に委曲に落とす術なし

 吾王の速瀬に立ちて巌ケ根に
  禊給へる御姿雄々しも

 駒井川速瀬を見れば村肝の
  心勇みて身体戦く

 主の神の御旨に叶ひ奉らむと
  百日百夜の禊に立つも

 百木々の茂みの露のかたまりて
  この速川となりにけるかも

 川幅は広く水底深くして
  流れ急しき駒井の滝津瀬

 岸の辺の木々の梢に鶯は
  春を歌へど吾魂寒し

 庭躑躅岸辺に匂ひて水底に
  赤白紫の花を写せり

 滝津瀬の音高々と夜もすがら
  響かひながら月を流せり

 朝されば天津日流れ夕されば
  月の流れる駒井の川水』

 シウランは歌ふ。
『七日七夜禊の業も甲斐なくて
  百日の禊を此処にするかも

 吾魂は十重に二十重に汚れしか
  月見の池の水にも洗へず

 速川の流れをあびて吾魂は
  軍の司と仕へ得べけむ

 今日よりは猛き心を洗ひ去り
  言霊軍の司とならばや

 岸の辺に清しく鳴ける河鹿の
  声は水面に慄へて流るる

 夜昼の差別もあらず清しかる
  言霊宣れる天晴れ河鹿よ

 河鹿にも劣れる醜の言霊を
  持てる吾身の愧かしき哉

 夜昼を河鹿は駒井の川水に
  洗ひて言霊澄みたりにけむ

 桃桜匂へる花のあかあかと
  水にうつろふ春は長閑けし

 速川の瀬筋流るる桜花は
  何処の海に息所を定めむ

 吾心瀬筋流るる花の如
  果しも知らずなりにけりしな

 水冷ゆる此の谷川に禊して
  蘇らさむ吾魂を

 月光山新に建てし宮内に
  神や天降らすを待つ禊なり

 一度は天降りましたる主の神の
  汚れを忌みて帰りましける

 世の中に神の守りのなかりせば
  片時だにも生命保てじ

 谷々を縫ひて流るる速川の
  水瀬の水は冷え渡りけり

 川水はよし冷ゆるとも百日日は
  この川中に立ちて禊がむ

 玉の緒の生命消ゆると思ふまで
  冷え渡るなり駒井の流れは』

 左守のナーマンは歌ふ。
『吾王の御後に従ひ来て見れば
  駒井の禊は冷え渡るなり

 冷ゆるとも何か恐れむ王のため
  御国の為と思へば安し

 王の為国の為にはあらずして
  吾魂を清むる為なり

 吾魂の汚れ全く清まらば
  国と王との為となるべし

 吾魂の曇りし故に吾王を
  月光山に忍ばせ奉るも

 思ひ見ればさも恐ろしき吾なるよ
  王を悩ませ国失ひて

 祭政一致この大道を忘れしゆ
  イドムの国は覆へりたり

 政治なさむと思へば身体も
  霊魂も共に清むべきなり

 主の神の生ませ給ひし国原に
  禊なくして生命保たむ

 玉の緒の生命は神の賜物と
  思ひて禊の業にいそしむ

 政治なさむと思へば真先に
  禊の祓ひ勤むべきなり

 主の神の恵みを忘れ吾力に
  国治むると誤りてゐし

 誤てる心抱きて政治
  如何になすとも治まるべしやは

 政治は第一神を祀ることよ
  神の御国は神の任意なり

 百日の禊終れば村肝の
  心改めて王事に仕へむ

 言霊の剣を右手に振りかざし
  王が政治を補け奉らむ

 滔々と流るる水の瀬をはやみ
  行方を知らぬ駒井の川かな

 月光山峯より落つる木々の葉の
  露は集ひて川となりしか

 一人の露の力も重なれば
  末に誠の川となるべし』

 ターマンは歌ふ。
『春霞棚引きそむる谷間に
  吾は謹み禊するかも

 巌を噛み流るる水の音高く
  生言霊を非時歌ふ

 巌を打つ速瀬の水の響さへ
  心にかかる国の行末

 王思ひ国を思ひて月光の
  山に朝夕詣でけるかな

 汚れたる吾身体を主の神の
  御前に運ぶと思へば恐ろし

 山は裂け海はあせなむ世ありとも
  誠の道は踏み外すまじ

 速川の水に浸れば自ら
  吾魂は清まる心地す

 主の神の誠の道をあゆめども
  禊の業は始めなりけり

 天地の雲霧汚れも払ふべし
  禊の道の功ありせば』

 かく神々等は禊に余念なき折もあれ、上流より生命を助けて呉れいと死物狂ひに叫びつつ半死半生の体となり、彼方此方の巌に頭を打ちつけながら、全身紅に染みつつ流れ来る一人の男あり。禊に余念なかりしアヅミ王は目ざとくも打ち見やれば、豈計らむや、日頃敵とねらひしエールス王の無残なる姿なりけるにぞ、アヅミ王は吾身の危険を忘れて激流に飛び込み、半死半生のエールス王を脇に抱へ下流の稍水瀬弱き処へ救ひ来り、川の洲へ救ひ上げ、水を吐かせ種々様々と介抱なしける。シウランを始めナーマン、ターマン、ムラジ姫も、何人ならむと速瀬を横切り近付き見れば、吾本城を攻め落したるエールスなりければ、怨みを晴らし、城を取返さむは此の時なりと集り来り、荒石を掴んで打ち殺さむといきまき居る。
 ムラジ姫は声高らかに歌ふ。
『我国に仇を為したるエールスの
  司の知死期心地よきかな』

 ナーマンは歌ふ。
『吾王を悩まし奉りし仇なれば
  神の罰にあひしなるらむ

 今こそは天の与へよ首打ちて
  イドムの城を奪ひ還さむ』

 ターマンは歌ふ。
『荒川に禊なしたる報いにて
  仇は吾手に入りにけるかも

 川の瀬の石を拾ひて此の仇を
  打ちて殺さむ面白きかな』

 アヅミ王は右手を差し上げ、空中を押へる如き体をしながら、
『待て暫しエールス王も主の神の
  貴の御子なりただに許せよ

 吾御霊神に離れし罪なれば
  エールス王を怨むに及ばじ』

 エールス王は稍正気付き、四辺をキヨロキヨロ見廻しながら、アヅミ王の吾前に立ち介抱せるを見て、声高らかに笑ひ歌ふ。
『吾生命何故ならば助けしぞ
  吾荒行をよぎらむとするか

 吾こそはエールス王よ腰弱き
  汝に救はれ顔の立つべき』

 ムラジ姫は目を釣り上げて歌ふ。
『心弱き吾王なるかもイドム城
  奪ひし仇を許し給ふか

 生命をば救はれ彼は逆しまに
  譏り散らせり許し給ふな』

 アヅミ王は歌ふ。
『悪らしと日頃思ひし仇ながら
  艱める見れば助けたくなりぬ

 とに角に仇の艱みにつけ入りて
  報ゆる心は愧づべきものぞや

 堂々と表に立ちて戦はむ
  されど吾等は弓矢の要なし

 主の神の生言霊を振りかざし
  仇を言向け和さむと思ふ』

 ナーマンは歌ふ。
『吾王の仰せ宜よと思へども
  悪き仇をば許すべきやは

 玉の緒の生命救はれ譏り言
  吐くこの仇を如何で許さむ』

 ターマンは歌ふ。
『主の神の悪しみに依りて玉の緒の
  生命危き汝にあらずや

 救はれて荒き言葉を吐き散らす
  汝は誠の曲津神なり

 いざさらば石もて打たむエールスの
  玉の生命の消ゆる処まで』

 茲にアヅミ王はエールス王の生命を救へよと頻りに厳命すれども、怨み骨髄に徹したる他の司等は、この機会に打殺さむと四方八方より石を拾つて投げつけければ、不思議やエールスの姿は水煙となりて水中に消えにける。アヅミ王を始め一行禊の面々は此の体を見て不思議の念に堪へやらず、茫然として水中を見詰めけるが、胴の廻り七八丈もあらむかと思はるる蛟竜、大口を開き紅き舌を吐き出しながら、一行の頭上に鎌首を立て、一呑みにせむず勢を示しける。
 茲にアヅミ王は従容として少しも騒がず、四人の狼狽せる姿を静かに眺めながら、

『一二三四五六七八九十百千万』

と歌ひ行くにつれ、蛟竜の姿は次第々々に細り行きて、終には小さき蠑螈となり、アヅミ王の足許に這ひ寄り来る。アヅミ王は蠑螈を掌に載せ、再び天の数歌を宣りければ、掌よりシユーシユーと煙立ち昇り、見る見る天に冲し、煙の中より仄かに見ゆる竜の姿以前に優る巨体なりける。何処ともなく神の声あり、雷の如く響き来る。
『美しきアヅミの王の魂を
  主の大神は諾ひ給へり

 汝が心清まりぬれば百日の
  禊は済みぬはや帰りませよ

 吾こそは高日の宮より天降りたる
  神鉾神ぞ心安かれ』

 アヅミ王は恭しく歌ふ。
『有難し吾魂をみそなはす
  神の言葉に蘇りたり』

 空中より再び神の声あり。
『高光の山の尾の上の神苑に
  神鉾の神御霊とどめむ

 アヅミ王は神の御殿に仕へつつ
  イドムの国の基を定めよ

 ムラジ姫の心は未だ汚れたり
  百日の禊の功は消えたり

 シウランやナーマン、ターマン三柱の
  禊は水の泡となりけり

 改めて百日の禊に仕ふべし
  月光山は聖所なりせば』

 茲にアヅミ王は三日の禊にて許され、月光山の神殿に奉仕し、国政を見る事となり、ムラジ姫以下は改めて百日百夜の荒行を命ぜられ、月光山の神殿及び政務に仕ふることを許されにける。
(昭和九・八・四 旧六・二四 於伊豆別院 森良仁謹録)
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