引退を宣言して身を隠していたナーリスは、部下のナイトを数百従えて反乱軍の群集の前に整然と現れ、声高らかに悪人たちの滅亡を告げた。そして、政局の混乱は自分が収めて善政を敷くことを約束し、民衆に武器を収めて元の営みに立ち返るよう説得した。
反乱軍の群集側からは夕月が現れ、ナーリスを中心として新しい国政を立て直すことを宣言した。ナーリスと夕月は混乱の収拾を祝しつつ、述懐の歌を歌った。
ナーリスと夕月は部下を従えて城内に入り、万事後片付けをすると、重臣たちを集めて国乱を鎮定した祝賀の席を設けた。
一同は述懐の歌を歌いあい、悪女・アララギがイドム国からやってきたことが国難の始めであったと回顧した。ナーリスは、王の言葉に従って早くサール国に帰還したために、すんでのところでサール国の自滅を防ぐことができたことを述懐した。
かくする折りしも、数千の騎士たちがイドム国から逃げ帰ってきた。サール軍の副将チンリンは、エールス王・王妃・左守チクター・軍師エーマンら首脳陣はすべて命を落とし、アヅミ王の反攻勢い強く、サール軍はイドム国を追われてしまったことを報告した。
ナーリス、夕月ら一同はこの報告に顔色を変え、茫然として言葉を失ってしまった。そして、チンリンから王の落命について聞くと、一同は、他国を戦によって奪おうとした欲の罪により、王の一族の血筋が絶えることになってしまったことに思い至った。
ナーリスは、残された重臣一同、誠一つに心を合わせて国の再建を行う決意を表した。そして、エールス王が残した戒めを忘れず、今後は天地の神を畏れ謹んで誠の道を進んで行くことを、改めて重臣一同に示した。
ナーリスはサール国内に王一族の不幸を告示し、盛大な葬儀を執り行った。そして、木田山城内に荘厳な主の神の御舎を造営し、朝夕、正しい政治が行われるようにとの祈願を怠らなかった。