トール河畔の森林深くに馬を駆って遊んでいた聖師、松村、萩原、白凌閣、温長興らは、新緑の萌える川辺に大きな館が並んでいるところにやってきた。
白凌閣を通訳として訪ねてみれば、これはこの辺りに勢力を張る女馬賊・蘿龍(ラリウ)の館であった。
日本から来た聖者の一行であると伝えると、蘿龍は聖師を導き、日本語で身の上を語りだした。
蘿龍の父は日本人であり、日清戦争のときに台湾からやってきた人で、蘿清吉(ラシンキツ)と名乗っていた。母は蒙古の人であった。父は三千騎を率いて蒙古独立軍に参加したが、張作霖の姦計に欺かれて殺された、という。
一行は歓迎されて館に宿泊した。蘿龍は聖師と行動を共にすることを誓い、別働隊となって働いた。
しかし、聖師一行がパインタラで敗れたことを知ると、蘿龍の別働隊は洮南県を襲って敵を討とうとしたが、ついに捕らえられて処刑された。