巻 | 篇 | 篇題 | 章 | 章題 | 〔通し章〕 | あらすじ | 本文 |
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- | - | - | 如意宝珠 寅の巻 | - | 本文 | ||
- | - | - | 序 | - | 物語の口述を始めてから、満六ケ月まで後十日を残すところのみとなった。
当初の予定では、六ケ月で二十巻を仕上げる予定であったので、何事も予期のごとくにならないものであることを痛感した。この上は、惟神に進む考えである。
開闢の始めから数十万年の未来にわたっての際限ない夢物語であれば、どのくらいの冊数になるかも予想ができない。
また第十三巻からは、少しく物語の用語と形式が変わっていますが、ご容赦・ご愛読ありますようお願いいたします。 |
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- | - | - | 凡例 | - | 本文 | ||
- | - | - | 総説歌 | - | 大正壬戌の如月の終わりもつつがなく、輝き渡る言霊の清き神代の物語。
古きを温め、新しく世人に知らす神の道。清き神代を来たさんと、教えの御子に励まされて、口の出も滑らかに月日のお示しをめぐらす。
輝き渡る三五の月の瑞月が、雲を押し分けて地に降り、泉湧き出る奇魂から英語を引き抜き来たり、すらすらと語る物語。
新旧用語をかき集めた言霊は、妙音菩薩の神力と、並んで尊い観自在三十三相また思想の泉の尽きない言霊別神。
霊幸いましまして、厳の御魂のいつまでも、湧き出て尽きぬ瑞御魂、興味は深く感化を布いて行く。
イグノランスの瑞月が、アートに疎き身をもって、文士気取りのアーティストとして、ベストを尽くし身を尽くし、自性の教え・加持の教、尽きぬ巻の糸口を求めてここに記す。 |
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01 | 00 | 正邪奮戦 | - | 本文 | |||
01 | 01 | 破羅門 | 〔568〕 | ノアの子孫のハム族は、大国彦の子孫である大国別を神の王と迎え奉り、エジプトのイホの都に宮柱を立てて、その婆羅門の教えを広めて行った。
教線は拡大し、西は地中海に面したヨーロッパ各地へ、東は小アジア、メソポタミヤの顕恩郷に達し、さらに越えてペルシャを横切り、インドにまで達した。セム族の流れたるコーカス山の三五教の神人らは、婆羅門教を言向け和そうと顕恩郷に広道別らを使わした。
コーカス山を三五教に奪われ、ウラル山とアーメニヤが危機に瀕したウラル彦・ウラル姫は、常世国に逃走した。八頭八尾の大蛇や悪狐の邪霊たちは、大国彦の末裔である大国別・醜国姫の夫婦に憑依した。そしてエジプトのイホの都に現れ、第二のウラル教たる婆羅門教を開かしめた。大国別は、大自在天の名を称した。
この婆羅門教は、極端な難行苦行をもって神の御心にかなうとした教理である。婆羅門教は進んでメソポタミヤの顕恩郷、エルサレムの黄金山にまで拡大し、聖地周辺の三五教の教理はほとんど破壊されてしまった。
コーカス山の素盞嗚神は、日の出神、日の出別神らに命じて、婆羅門教を恭順させようとした。霊鷲山の広道別(太玉命)は、妻・松代姫をコーカス山に残し、娘・照妙姫にエデンの花園を守らせ、安彦(弥次彦の改名)、国彦(与太彦の改名)、道彦(勝彦の改名)を引き連れて、顕恩郷にやってきた。
婆羅門教は霊主体従の教えを曲解し、極度に身体を軽視して難行苦行によって全身から血を流して神の心にかなうとした。邪霊は血を好む故に、霊主体従の美名の下にこのような暴虐なる行為を勧める教理を立てたのである。
婆羅門教に魅惑された人々は、生を軽んじ死を重んじるのであった。しかし霊肉一致の天則を忘れ、神の生き宮である肉体を軽んじることは、生成化育の神の大道に反すること、もっともはなはだしき事なのである。
また婆羅門教は上中下三段の身魂の区別を厳格に立てた。大自在天の祖先たる大国彦の頭から生まれたとされる者の系統は、いかに愚昧であっても人々の上位に立って治者となった。次に神の腹から生まれたとされる者の系統は、準治者の地位をもって安逸な暮らしを保証された。そして両者は、神の足から生まれたとされる大多数の人民の膏血を絞る、という教理であった。婆羅門教が拡大するにつれて、国の中にはひそかに怨みの声が満ち満ちていった。
太玉命が安彦、国彦、道彦を連れて顕恩郷の東南の渡し場にやってきた。そこには関所が設けられ、鳶彦、田加彦、百舌彦の三柱の婆羅門教の手先が守っていた。
道彦は関所の門前で大音声名乗りを上げ、婆羅門教徒たちを挑発した。鳶彦、田加彦、百舌彦の三人は槍をしごいて道彦に襲い掛かった。道彦は槍をよけて一人の槍を叩き落とした。
その槍を拾って構えると、道彦の勢いに恐れをなして、鳶彦は河中に飛び込んで逃げてしまった。残る二人も槍を捨てて降参した。
田加彦と百舌彦は、元は三五教だったが、仕方なく婆羅門教に降っていたのだ、と明かした。そして、逃げた鳶彦が軍勢を引き連れてくるのを恐れて、自分たちを連れてフサの都へ逃げて欲しいと懇願する。
道彦は、力の強い宣伝使と一緒に来ていると言って二人を安心させる。道彦の合図の笛で、太玉命らは関所の方に駆けつける。一方、河の向こう岸からは騒々しい人声が聞こえてきた。 |
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01 | 02 | 途上の変 | 〔569〕 | 田加彦と百舌彦は、顕恩郷を治める婆羅門教の鬼雲彦の軍勢を恐れるが、太玉命は一笑に付し、舟を用意させて一同渡河することとなった。
向こう岸からは雨のように矢が降り注ぎ、百舌彦は胸を射抜かれて水中に倒れ落ちた。田加彦は驚いて河中に身を躍らせてしまった。船頭を失った舟は岩に激突し、宣伝使たちは河に投げ出されてしまった。
太玉命は一人、顕恩郷の川岸に流れ着き、宣伝歌を歌いながら顕恩郷内に進んで行く。すると闇の中に大火光が落下し、一人の容貌端麗なる神人が電光のような火気を放出しながら現れた。
神は、天照大神の第四子・活津彦根神と名乗った。そして、たったひとり婆羅門教の根拠に進み来るのは無謀の極みであり、引き返すように、と太玉命に警告した。
太玉命は、大神より委託された任務をあくまで遂行する決意を表し、それを引き留めようとする神は悪神の変化であろう、と厳しく問い詰めた。活津彦根神は汝の勝手にするがよい、と言い残して消えてしまった。
続いて、鳶彦が手下の一隊を引き連れて太玉命を取り囲み、襲い掛かるが、太玉命は懐より太玉串を取り出して左右左に打ち振ると、幻影のように消えてしまった。
さらに、悪神は命の妻子の幻影を現し、松代姫と照妙姫が婆羅門教のとりこになったかのように装い、情を持って命の顕恩郷侵入を思いとどまらせようとした。しかし命は、松代姫や照妙姫が、敵のとりこになって自分の情けを当てにするような卑怯な言動はありえない、として悪神の計略を見破り、太玉串を打ち振ると、活津彦根神が現れて幻影を消し去った。 |
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01 | 03 | 十六花 | 〔570〕 | 太玉命が路傍の岩に腰掛けて天津祝詞を奏上するおりしも、夜は明けてきた。そこへ、岩彦、梅彦、音彦、亀彦、駒彦、鷹彦らの宣伝使が、駒に乗ってやってきた。六人は、フサの都より、太玉命の加勢にやってきたのであった。
悪神らは巨人と谷川の幻影を見せて一行の進入を阻もうとするが、太玉命らは見破る。一行七人は荘厳な城壁にまでついにたどり着いた。そして、顕恩郷の婆羅門の大将・鬼雲彦に合わせるよう門番を厳しく問い詰める。
門番はあわてて、宣伝使たちを城に迎え入れた。婆羅門教の将卒たちが左右に整列して居並ぶ中を、宣伝使たちは奥へと進んで行った。
十数人の美人が現れ、一行を奥殿に招き入れる。そこにはご馳走が並べられていた。鷹彦は美人たちに毒味を所望し、安全だとわかると岩彦は盃をぐっと飲み干した。しかし音彦と駒彦は食事に手をつけなかった。
鬼雲彦夫婦が現れ、婆羅門教は霊主体従であり、三五教とは姉妹教にあたる、ぜひ提携したい、と腰を低くして挨拶した。そして美人の中の愛子姫、幾代姫に舞を舞わせ、酒食を勧めた。顕恩郷の婆羅門の上役たちも、宴に参加して飲み、かつ食らった。
宣伝使らは酒を飲んで酔った振りをしつつ、警戒を解かないでいた。しばらくすると、顕恩郷の上役たちは黒血を吐いて苦しみ始めた。宣伝使たちも、苦悶の態を装って倒れた振りをした。
鬼雲彦夫婦は、毒の入った酒を自分の部下に飲ませて宣伝使たちを油断させ、諸共に葬ってしまおうという計略だった。
しかし鬼雲彦に仕えていた十六人の美人たちは、婆羅門教の将卒たちが毒に倒れて警備が薄くなったのを見ると、懐剣を抜いて鬼雲彦夫婦に迫った。美人たちは、実は神素盞嗚尊の密使たちであると明かした。
鬼雲彦夫婦は形勢不利と見ると、大蛇となり邪神の本性を現して、遠く東方の天を目指して逃げてしまった。
十六美人のうち愛子姫を始めとする八人は、神素盞嗚尊の娘たちで、婆羅門教に囚われた振りをして顕恩郷に入り込んでいた。残りの八人は婆羅門教の侍女たちであったが、愛子姫らが三五教の教えを感化し、今は三五教徒となっていたのであった。
太玉命は、あらかじめ自分自身の娘たちを敵地に忍ばせて、顕恩郷奪回の準備をされていた神素盞嗚尊の深いご神慮を悟り、ありがたさに涙に暮れて神言を奏上した。
すると、そこへ妙音菩薩が女神の姿で現れ、顕恩郷には太玉命と愛子姫、浅子姫が残って守備につき、残りの宣伝使・女人たちはエデン河を渡ってイヅ河へ向かうように、と託宣した。妙音菩薩は、先にエデン河に落ちて帰幽した安彦、国彦、道彦、田加彦、百舌彦の五人は蘇生して、イヅ河のほとりで一行と合流するであろう、と告げて姿を隠した。 |
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01 | 04 | 神の栄光 | 〔571〕 | 太玉命は毒酒に倒れた婆羅門教の将卒たちを憐れみ、解毒回復の祈願によって救った。婆羅門の将卒たちは感謝の涙を流し、歌を歌い踊りを踊って宣伝使たちを歓迎した。
愛子姫、太玉命は宣伝歌を歌って大神への祈願と感謝を表した。
顕恩郷はここに三五教の教えを取り戻し、メソポタミヤは再び回復した。メソポタミヤを追われた婆羅門教の邪神たちは、ペルシャから印度に渡って教線を拡大し始めた。
六人の宣伝使と、神素盞嗚尊の娘たち、侍女たちはそれぞれ四方に散って宣伝を行うこととなった。 |
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01 | 05 | 五天狗 | 〔572〕 | エデン河に投げ出されて命を失った(第2章参照)安彦、国彦、道彦、田加彦、百舌彦の五人は、一途の川のほとりにやってきた。
一行は一途の川の婆の装置によって中空に巻き上げられてしまい、突然の電光雷鳴と共に落下したとみるや、気がつくと高山の間の谷川の流れの砂辺に横たわっていた。
これは妙音菩薩が一行をエデン河から救って、メソポタミヤ山中の谷川に降ろしたのであった。 |
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01 | 06 | 北山川 | 〔573〕 | 川のほとりで目が覚めた五人は、まだ幽界にいるのではないかといぶかる。百舌彦は、幽界の木の実には苦味があるはずだと言って、木に登って木の実を食べ出した。
百舌彦は田加彦をからかい、怒った田加彦は百舌彦に石を投げつけて、木から落としてしまう。一同の祝詞によって気がついた百舌彦は、象のような化け物に変身して、田加彦を木の上に置き去りにする。
木から下りてきた田加彦は、またしても百舌彦と喧嘩を始め、追いかけ合いながら走って行ってしまう。安彦、国彦、道彦らは二人を追って走り出す。 |
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01 | 07 | 釣瓶攻 | 〔574〕 | 田加彦は、逃げる百舌彦に追いついて殴りかかった。二人が追いかけ合いをしていると、四五人の男が現れて、二人を捕まえて縛り、滝つぼまで引きずっていった。
男たちは、鳶彦の手下であった。鳶彦は、婆羅門教を裏切った田加彦と百舌彦に対し、修行と称して拷問を加える。
そこへ三人の宣伝使が声を頼りに二人を探しに来て、救出する。天津祝詞によって、息も絶え絶えになっていた田加彦と百舌彦は再生した。辺りには微妙の音楽が流れ、妙音菩薩のご加護が感じられた。
五人は広い道に出て、東南を指して進んでいった。十数件の小さな村に着いたが、この村にはそびえたつ大廈高楼があった。一行は高楼の前にたたずむと、琴の音が聞こえ、聴いたことのあるような女の声が聞こえてきた。 |
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01 | 08 | ウラナイ教 | 〔575〕 | 広い館の門には、風雨にさらされた表札に、神代文字で「ウラナイ教の本部」と書かれていた。安彦は、田加彦と百舌彦に中の様子を見てくるように依頼した。
二人が塀を乗り越えて館の中の様子を見ると、高姫という教主らしい肥えた中婆が中央に控え、七八人の宣伝使らしい男女がとろろ汁を吸っている。いずれも、盲人のような手つきである。
田加彦と百舌彦は、盲人らしいのを幸いに、とろろ汁を奪って吸ってしまう。ウラナイ教徒たちは、仲間にとろろ汁を取られたと思って喧嘩を始めてしまう。
高姫は盲人の真似をしていただけだったので、二人に気づき、出刃包丁を持って追いかけ、大騒ぎになる。
田加彦と百舌彦は、逃げる途中に針だらけの枝が仕掛けてある水ためにはまり込んでしまうが、高姫もよろめくはずみに水ために落ちて苦しむ。その隙に田加彦、百舌彦は逃げてしまう。
安彦、国彦、道彦は水ための側を通りかかり、高姫を救出した。そこへ田加彦、百舌彦が戻ってきた。高姫は二人がとろろ汁を盗んだことを非難する。道彦は話を聞いて吹きだし、お詫びに田加彦と百舌彦をウラナイ教にくれてやろう、という。 |
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01 | 09 | 薯蕷汁 | 〔576〕 | ウラナイ教もまた、邪神が人の身に巣くって立てた曲業の教えであった。
教主・高姫は、三人の宣伝使に危難を救われたとて、強いて一行を饗応の宴に迎え入れた。
五人が広間で待っていると高姫が現れ、ウラナイ教の祀る大自在天が三五教の宣伝使に乗り移って自分を助けたのだから、一行は大自在天の道具として使われただけだ、と言い捨てる。
また高姫は、わざと縁の欠けたどんぶりにとろろ飯を盛ってこさせ、宣伝使たちの身魂にふさわしい器を見つけてきた、と嘲笑する。国彦は怒ってとろろ飯を座敷に投げ捨ててしまった。
高姫らはその有様を見て、宣伝使の行いをあげつらって三五教をあざ笑う。黒姫と名乗るもう一人の婆は、素盞嗚命をこき下ろした。そして、高姫を変性男子の血筋で日の出神の生き宮である、と持ち上げた。
国彦は罵り合いの末、屁をこいて出て行ってしまった。道彦と安彦はその場を取り繕い、なぜ盲人ばかり信者にしているのか、と逆に質問をした。
黒姫は、世間のことが何もわからないようにしておいて神一筋となるよう、耳の鼓膜を破り、目の玉を抜いてしまうのだ、と答えた。そして高姫と黒姫は一同に、三五教を捨ててウラナイ教に改心するようにと迫り、出刃包丁を閃かして襲い掛かった。
安彦、道彦は逃げようとするが、とろろ汁にすべって転んでしまう。高姫と黒姫もすべって転び、出刃包丁は安彦の側の床に突き刺さった。
田加彦、百舌彦が加勢に来るが、やはりとろろ汁にすべって転んでしまう。 |
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01 | 10 | 神楽舞 | 〔577〕 | 神素盞嗚尊がしろしめす大海原の国々には、国治立尊が野立彦神と現れて、埴安彦命に神言を依さし給い、黄金山下に三五教の基を開かしめた。
豊国姫尊は野立姫神と現れ、神素盞嗚尊の水火を合わせて埴安姫命となった。そして、三五教を経緯に天下に宣伝し、神人はみなその徳に浴して、一時天下は泰平に治まった。
しかし邪神は次第次第に天下に広がって、やがて荒ぶる神たちは天下を充たすにいたった。
神素盞嗚大神は大海原の国を治めかねて涙に暮れた。母のいる根の堅洲国に行きたいという神素盞嗚大神に対し、御父・神伊邪諾大神は、望みのままにするがよい、ただしこの国から出て行くように、と厳しく答えた。
コーカス山を天の鳥船で立ち出た神素盞嗚尊は、天教山は高天原の姉・天照大神に暇乞いを告げようと、降り立った。しかし姉大神は弟神の心を疑い、高天原を占領しに来たのではないかと武備重々しく出迎えた。
神素盞嗚尊は自分の潔白を晴らすために、誓約の神事を姉神と執り行った。その結果、神素盞嗚尊の心が証明された。
しかし神素盞嗚尊の部下の八十猛神たちは、疑われたことに腹を立てて、誓約の後にかえって荒ぶり、諸所で乱暴を働いた。そのために天照大神がお隠れになってしまうという事態に立ち至った。
そこで、金勝要神の分霊たる思兼神は、天照大神の再出現を乞う神事を執り行うことを提案した。出雲姫命は天鈿女命と現れ、天の数歌を歌って舞い狂った。天照大神が岩戸をわずかに開けたところ、手力男神が岩戸をひき開けた。
八百万の神々は、今回の事変の罪を神素盞嗚尊に帰し、追放した。神素盞嗚尊は一人旅に出て、悪神の征服に向かわれた。 |
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02 | 00 | 古事記言霊解 | - | 本文 | |||
02 | 11 | 大蛇退治の段 | 〔578〕 | 追放された素盞嗚尊が降られた出雲国とは、いづくもの国、という意味で、地上一切の国土のことである。
肥河上は、万世一系の皇統を保ち、完全無欠の神政を樹立する日本国、という意味である。
また鳥髪の地とは、十(たり)の神の顕現地、ということである。厳の御魂・瑞の御魂が神業に従事する世界経綸の地という意味である。
素盞嗚尊は世界を大改良するためにあまねく天下を経歴した後、ついに地質学上の中心である、日本国の高天原である至聖地に降臨し給うた。
自分が明治三十一年の八月に、瑞の御魂の神代として高座山より退われて、綾部の聖地に降ったのは、即ち素盞嗚尊が一人の選ばれた神主に憑依して、神世開基の出現地に参り上って神の経綸地であることを感知された、という古事記の予言が実現したのである。
肥の河上より箸が流れてきたのを見つけた、という尊の故事は、箸も橋も渡すという意味があり、悪を去って善に遷らしめる神教の意味である。神諭にも、綾部の大本は世界の大橋である、とある。
しかしこのような立派な教えも、邪神のために流し捨てられて日に日に神威が落ちて行くことが、ここに暗示されている。設立当時に某教会が開祖の教えを隠し、瑞霊を追い返して自分の教会を開設したような状態が、『ハシ』が川から流れた、ということである。
老夫・老女が童女を中に置いて泣いていた、という故事は、変性男子(国常立尊と開祖の身魂)がすべての人民を心配している、ということを表す。またオトメの言霊解は、「日本固有の大和魂の本能、花も実もある神人」の意である。
明治三十一年秋に、瑞の御魂に須佐之男神が懸かって、老夫と老女の合体神である開祖に面会した。そして櫛名田姫は本守護神金勝要神である。これはこの古事記の一節が実現したということである。
遠い外国の地は、数千年来悪神の企みによって混乱を来たし、またその悪思想によって日本魂が絶滅しつつある。ただひとつ、神国固有の日本魂たるオトメが残ったのみである。変性男子はこれをなんとかお守りしなくてはならない、と天下を嘆き、しかしその方法がわからずに天に向かって号泣されていた。
悪神の本体はひとつであるが、その意を汲んで世界覆滅の陰謀に参加しているのは、八人の頭株である。その下には無数の手下があって活動している。これが「身一つに頭八つ尾八つあり」ということである。
八つ頭とは、英、米、露、仏、独、伊などの強国に潜伏している現代的大勢力の巨魁のことである。地球上の各国は、みなこの悪神蛇神のために苦悶している。
ここに天より降った須佐之男命は、老夫なる国常立尊の神霊に対して、万民の救済を一任して欲しいと宣した。国常立尊は、あなたのご職掌をお教えください、とお尋ねになったので、須佐之男大神は、自分は天照大御神の実弟で大海原をしろしめす職掌である、とお答えになった。
変性男子の御魂はそれを聞いて大変喜び、自分の人民を貴神にお預けする、とおおせられた。これが明治三十一年の秋に、変性男子と変性女子の身魂に神懸かりがあったときの御言である。
瑞の霊魂である速須佐之男命は、二霊一体である神政開祖の神人より、人民の守護化育を一任され、一大金剛力を発揮して本来の日本魂に立替へ立直しをなし、更に進んでその実行者とし賜うた。
天下万民の身魂を改良して、足名椎・手名椎なる変性男子の御魂にお渡しするには、相当の歳月を要した。あるいは神徳、物質力、自然力、教戒、慈愛をもって導かれたそのご神恩を忘れてはならない。
速須佐之男命は変性男子の御魂に対して、立派に日本魂を作り上げられたことを神々に報謝するため、瑞垣を巡らして祭壇を設け、清らかな酒を捧げるべきである、と述べられた。
しかし八岐大蛇に憑依された悪神の眷属どもが、大神酒を飲んでしまった。瑞の御魂の大神は、世界人民の不行跡を見るに忍びず、神軍を起こしてこの悪鬼蛇神の憑依した身魂を切り散らし、亡ぼされた。
「肥の河」なる世界の祖国日本の上下人民は、心から改心して血の赤い真心となり、世界の人民と同じ血族のごとくなり、永遠無窮に天下が治まったのである。
また、大蛇の尾から都牟刈之太刀を発見した、という故事は、葦原の中津国の下層社会の人民の中に、立派な金剛力の神人を見つけた、ということである。
都牟刈之太刀とは言霊学上から言うと、伊都能売の身魂であり、三千世界の大救世主のことである。徳をもって人民を悦服せしめる一大真人、日本国の柱石にして世界治平の基となるべき神器的神人をして、草薙剣というのである。
また草薙剣とは、日本国全体のことでもある。この神国を背負う真人は、草薙神剣の霊魂の活用者である。 |
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03 | 00 | 神山霊水 | - | 本文 | |||
03 | 12 | 一人旅 | 〔579〕 | 追放された素盞嗚尊は、母神に会おうと地教山にやってきた。しかし、バラモン教の鬼掴の一団に囲まれてしまう。
尊が鬼掴を放り投げると、その勢いに辟易したバラモン教の一団は逃げてしまう。尊が山を登っていくと、大蛇に道をさえぎられた。
困惑している尊の前に、母神・伊邪冊命が現れ、世界を遍歴して八岐大蛇を退治し、叢雲の剣を得て天照大御神に奉るように、と命じた。
尊は母神の命を奉じることとし、山を降った。降る途中、帰順した鬼掴を共とし、西南指して進んでいった。 |
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03 | 13 | 神女出現 | 〔580〕 | 神素盞嗚大神は、天の岩戸の変の責任を一身に負って、世界漂泊の旅に出た。神素盞嗚大神は、神代における武勇絶倫の英雄である。山に囲まれた西蔵の国にお出でになった。
鬼掴はその昔、ペテロの都に現れた道貴彦の弟で、高国別の後身である。何度か生まれ変わった後、神命により地教山で神素盞嗚大神の登山を邪魔したが、実は大神を助けようと待ち望んでいたのである。
二人は雪深いラサフの都で一夜の宿を取ろうと一軒の藁屋を叩いた。この家の者によると、神素盞嗚大神がお隠れになって以来、邪神がはびこり、そのため国人のうちで心あるものは、茶断ち・塩断ちをして大神の再臨を待ち望んでいるのだ、という。
二人は夜中に人声で目を覚ました。神素盞嗚大神は、高国別に様子を探ってくるように命じた。高国別が忍び足で声のする方に行くと、大勢の男女が野原で祈願をしている。そして一人の幣を持った男について、丘に向かって走っていく。
高国別は一同の後を追っていくと、不思議にも皆、姿を消してしまった。高国別が丘の上に行くと、一人の娘がもろ手を組んでうつむいている。
高国別は娘に声をかけるが、返事がない。やにわに娘は高国別に紐をかけると、背負って走り出した。しかししばらくして倒れてしまった。高国別は凄んで、娘に訳を聞こうとするが、娘は高国別の素性や神素盞嗚大神のことを知っている風である。
高国別はてっきり邪神の化身と思って娘を問いただすが、娘ははぐらかした答えしかしない。高国別は娘の頭がおかしいと思って去ろうとするが、娘はまたしても紐で高国別を引っ掛け戻し、おかしな問答を続ける。
高国別は消えた村人たちの後を追ってその場を去ろうとすると、たちまち地が凹み、地の底に落ち込んでしまった。 |
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03 | 14 | 奇の岩窟 | 〔581〕 | 実は娘は木花姫命の化身であり、高国別の心を固めようとして問答を仕掛けたり、引っ掛け戻しをしたりしていたのであった。
木花姫命は、岩窟を探検して魔神に悩まされる多数の生霊を救うように、と高国別に命じて姿を消した。 |
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03 | 15 | 山の神 | 〔582〕 | 高国別は岩窟で不思議な女神を追いかけるうち、落とし穴にはまって命を落としてしまう。天国をさまよううちに、宣伝使亀彦、梅彦ら一行と出会い、活津彦根神と呼ばれる。亀彦と梅彦はそれぞれ、神素盞嗚大神の娘である菊子姫、幾代姫と夫婦となっていた。
そして高国別は神素盞嗚大神の長女である愛子姫と契りを結ぶが、木花姫神が現れて、まだ現界に役割が残っているとして生き返る。
目を覚ました高国別は、深い井戸の底に落ち込んでいることに気がついた。そこへ天国で見たとおりに亀彦、梅彦、菊子姫、幾代姫、愛子姫が現れる。
井戸の底から石段を上ってきた高国別は、一同と合流する。夢で見たとおり、愛子姫は高国別を夫として迎え、六人で岩屋の探検に進んで行くことになった。 |
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03 | 16 | 水上の影 | 〔583〕 | 亀彦、梅彦ら五人は、神素盞嗚大神のあとを追って西蔵にやってきたところ、女神の導きによって高国別を救うようにと、岩窟にやってきたのだ、と語った。
一行は、岩窟の中で鬼によって苦しめられていた老若男女を救った。さらに奥へ進んで行くと、岩戸の裏側に一人の女が縛められている。女は、愛子姫の従者・浅子姫であった。
浅子姫は、岸子姫・岩子姫らと共に愛子姫らを追って西蔵にやってきたが、ウラナイ教の蠑螈別によって捉えられてしまったのだ、と語った。そして岸子姫・岩子姫の安否を気遣った。
さらに進んで行くと池があり、岸子姫と岩子姫は、池に重りをつけられて投げ込まれ、苦しんでいた。梅彦と亀彦は池に飛び込んで二人を救出した。 |
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03 | 17 | 窟の酒宴 | 〔584〕 | 岩窟の中に館があり、高姫、黒姫、蠑螈別を始めとするウラナイ教の信徒たちが酒宴を張っている。
黒姫は、池に投げ込んでおいた二人の女(岸子姫と岩子姫)を連れてきて、芸をさせて慰みものにしようと案を出す。丁ン助と久助は、二人を池から連れてこようとするが、池のほとりには三男六女の宣伝使たちが立っていた。
丁ン助と久助は恐れをなしてへたり込んでしまう。亀彦が二人を怒鳴りつけると、二人は逃げ出してしまった。
丁ン助と久助が、宣伝使たちがやってきたことを知らせると、館の門前に宣伝歌が響いてきた。高姫、黒姫、蠑螈別らウラナイ教の一同はたちまち苦しみを覚えてその場に倒れてしまった。 |
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03 | 18 | 婆々勇 | 〔585〕 | 苦しみながらも黒姫は気を取り直して立ち上がり、ウラナイ教の一同を正気づけようと演説を行う。
それによると、変性女子の霊や肉体を散り散りばらばらにして血をすすり、骨を粉となし、再びこの世に出てこないように封じるのがウラナイ教の宗旨である、とする。そして神素盞嗚大神を罵倒するのであった。
しかしますます激しく響いてくる宣伝歌に逆上して、高姫や蠑螈別は同士討ちを始めてしまう。
黒姫は一人、懐剣を持って門前に走り出た。しかし宣伝使たちの勇姿を見ると、肝をつぶしてその場に泡を吹いて立ち止まってしまった。
その様子のおかしさに、宣伝使たちは思わず吹きだした。 |
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04 | 00 | 神行霊歩 | - | 本文 | |||
04 | 19 | 第一天国 | 〔586〕 | 神素盞嗚大神は、西蔵を越えてフサの国を打ち渡り、ウブスナ山の山頂に隠れ家を定めて、密かに神徳を現していた。
瑞霊の元津祖・豊国姫神の分霊である言霊別命は、国祖御退隠の際に幽界にて少彦名神となっていたが、神素盞嗚大神が漂泊の旅に出たと聞き、貧しい身分の人の腹を借りて、再びこの世に現れて、言依別命となった。
玉彦、厳彦、楠彦は言依別命の供となり、月の国を越えてフサの国の都・タールへと着いた。タールの都では、吾勝命が日の出別神と現れて、神政を敷いていた。言依別命一行は日の出別神に面会し、神素盞嗚大神の隠れ家を教えられ、喜び勇んで河鹿峠を越えていった。
神素盞嗚大神はウブスナ山の山頂、斎苑の高原に宮殿を構え、八十猛神に守らせた。自らは千種万様に御姿を変じ、変幻出没して御国を守らせつつあった。
斎苑の館に至るためには、河鹿峠を越えていくのが順路である。言依別命一行は、急坂を駒にまたがって進んで行く折、突風に煽られて谷底に転落してしまった。
と思う間に、一行はとある風景のよい高山の麓に降ろされていた。一行は、ここは天国ではなかろうかと不思議に思っていると、天の磐船が降りてきた。中から八人の童子神が現れると、大神の命であるとして言依別命一人を招きいれ、行ってしまった。
残された玉彦、厳彦、楠彦は、足の続く限り進んで行くこととした。途中、美しい河につかって禊をすると、三人の衣服は、鮮花色に変じた。
すると向こうから、多数の奇妙な鳥を連れた男がやってきた。男は、言依別命の命により、三人を迎えに高天原からやってきたという。男は言代別神・松彦と名乗った。
松彦は鳥たちを辺りに放すと、三人を案内して進んで行った。すると、鏡のように輝く岸壁に行き当たった。ここは鏡の岩と言い、三人が降り立った第二天国の終点にあたるという。鏡の岩を越えなければ、第一天国に入れない関門であるという。 |
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04 | 20 | 五十世紀 | 〔587〕 | 三人はどうやって鏡の岩を突破しようかと思案に暮れている。松彦は、河鹿峠で吹き飛ばされて失った、三人の肉体の死骸と、乗ってきた馬の死骸を持ってこなくては、天国に入れない、と謎をかける。
厳彦は、松彦の謎にある「馬」は心の駒を表し、「肉体」は魂のことであると気づいた。そうして、自分たちが天国の美しさに心の駒の手綱を緩め、魂を宙に飛ばしてしまい、祝詞の奏上を忘れていたことに気づいた。
三人が天津祝詞を合奏すると、鏡の岩が自然に開かれて、大きな道が現れた。一行が進んで行くと、向こうから小さな五人連れの男女が歩いてきた。松彦は、これは五十世紀の人間の魂である、と説明した。
一行は美しい湖水の岸についた。松彦は三人を舟に迎え入れると、高天原さして漕ぎ出した。やがて、波の彼方の一つ島に、麗しい金殿玉楼が見えてきた。一行は上陸すると、壮麗な門をくぐり、松彦の案内で中に進んで行く。 |
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04 | 21 | 帰顕 | 〔588〕 | 一行は、金砂、銀砂、真珠を敷き詰めた清庭を進んで行くと、黄錦の制服を着た神人が迎え出た。それは言依別命であった。言依別命は一行を宮殿の奥へ招きいれ、国祖・国治立命に面会した。
次に、神素盞嗚命に面会した。神素盞嗚命は、言依別命ら一行四人は、聖地の有様を観覧してから現界に復帰し、使命を果たした後に再び高天原に帰り来るように、と神命を申し渡した。
その後、一行は松彦の案内で聖地の様子を見聞した後、松彦から与えられた四つの金色の翼を着けると、気がつけば河鹿峠の谷底に倒れていた。馬は辺りで草を食んでいる。
一行は高天原の様子を見せてもらったご神恩に感謝し、天津祝詞を奏上すると、馬に乗って山中を進んでいった。 |
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04 | 22 | 和と戦 | 〔589〕 | 言依別命一行は、神界探検の後、ウブスナ山の山頂指して進んで行く。斎苑館の門前で呼ばわると、八十猛神の長と名乗る、国武彦が出迎えた。斎苑館では、神素盞嗚大神は不在で、八島主(熊野楠日の神)、娘の愛子姫、幾代姫、亀彦、梅彦が留守をしていた。
八島主らは一行を館の奥に招いて、歓迎の宴を開いた。そこへ八十猛神が慌しく現れ、バラモン軍の襲撃の急を告げた。そして国武彦が奮戦中だが、旗色が悪く、一行にコーカス山に退避するようにと注進した。
しかし八島主を始め、招かれた言依別命ら一行も、まったく意に介せずに宴を続けている。亀彦と梅彦は、事態の急に押っ取り刀で防戦に出ようとするが、愛子姫に引っ掛け戻される。
遂にバラモン軍の鬼雲彦が血のついた槍を持ったまま宴の場に現れて、一同に降伏を迫った。また鬼掴もやってきて一同を脅すが、八島主らは泰然として宴を続け、鬼雲彦と鬼掴の様子を笑いの種にしている。
怒った鬼雲彦は、手下に下知して八島主らを襲わせるが、八島主はバラモン軍に霊縛をかけた。鬼雲彦らはその場に硬直して動けなくなっているところへ、国武彦と八十猛神が現れた。
国武彦と八十猛神は、天より日の出神に率いられた神軍が現れて、形勢逆転し、バラモン軍は打ち負かされて倒れ伏している、と報告した。言依別命と八島主は、玉彦に命じて敵味方の負傷者を治療しに行かせた。
厳彦と楠彦は、奥の間で硬直している鬼雲彦ら将卒たちに、宣伝歌を聞かせている。八島主は、腰から下だけ霊縛を解くと、バラモン軍は上半身が硬直したまま、その場を逃げ出した。 |
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04 | 23 | 八日の月 | 〔590〕 | 言依別命一行は、八島主らに別れを告げて、琵琶の湖を越え、コーカス山に詣でた。
コーカス山を守っていた松代姫は、一向らに神素盞嗚大神の消息を尋ねた。言依別命から大神の消息を聞いた松代姫は、無事を聞いて喜んだ。 |
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- | - | - | 跋文 | - | 神霊界の状態は、肉体人の住居する世界を似ている。
しかしお互いに相見ることはできない。これは神の定めた顕幽の区別の法なのである。
現世の人は、精霊界に入ったときに、神の許しを得て、初めて霊界事象を見聞することができるのである。
また天人や精霊界の住人は、鎮魂帰神の法によって人間の体を借りて憑依したときに、現界を見聞し、また人に話しかけることができるのである。
現界人は、物質的な思考に偏っているので、現界と霊界の相似に惑わされて、死んだ後もまだ生きていると思い込んでしまう者が多いのである。
現実界を後にして精霊界に移ることを死と言う。死んだ者は、身魂に属していたものをことごとく霊界に持っていくのである。
物質的な形骸は残していくが、死後の生涯に入った後も、同じ形の身体を保つ。しかして、物質的な事物からは分離し純化し、霊的活動を行うのである。
精霊界に身をおいても、名位富寿の願いや思索も学術もあり、現世で身に持っていた一切をもって活躍するのである。死によって自己本来の生命は決して失われない。
再び現世に生まれてくるのは神の意思によるのだが、その際記憶は一切忘却される。これは刑罰の一種である。一度霊界に復活してから、また娑婆に戻されるのは、不幸の御魂なのである。
人は現世にあるときに、五倫五常の道を踏んで、神の御子たる天職を尽くさなければ、中有界に踏み迷ったり、根底の国に落ちたりしてしまう。
真の神を信仰し、善と美を尽くして人の本分を力限りに努め、永遠無窮の天国に進んで行く用意を怠らないことである。
顕幽一致、生死不二である。生を軽んじ死を重んじることはならず、また生を重んじ死を軽んじてもだめである。
刹那刹那に身魂を磨き清めて神界と現実界の万物の大経綸の神業に惟神に尽くすべきである。 |
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- | - | - | 余白歌 | - | 本文 |