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霊界物語あらすじ

説明を読む
ここに掲載している霊界物語のあらすじは、東京の望月氏が作成したものです。
まだ作成されていない巻もあります(55~66巻のあたり)
第25巻 海洋万里 子の巻 を表示しています。
篇題 章題 〔通し章〕 あらすじ 本文
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この巻は、バラモン教の蜈蚣姫母子、友彦、清公らが心の底から執着心を払拭して竜宮の宝玉を授かり、地の高天原に凱旋した改心物語です。
一片の創作物として読んでも、修身治心の規範となる事を深く信じます。
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成因成果ことごとく皆、教えとならないことはない。山野の樹草が風に吹かれて自然の舞踏を演じる。河水は音楽を奏し、鳥歌い蝶舞い花笑う天地は、一つとして神の御声・御姿でないものはないのである。
空に輝く日月星辰も、みなこれ神の表現であり、天地は我々の大師であり教典である。善悪美醜、一つとして神の御姿なのである。
この三界の物語に述べるところも、一切の神業のみなのである。瑞月が走らせる口車も、また神の一端の御用であることを疑いません。
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01 01 〔747〕
時間空間を超越して、現幽神の三界を過去・未来・現在に通観した物語も、教祖が現れたもうた明治二十五年にちなんだ第二十五巻に達した。
高天原の大宇宙の外側に身を置いて全宇宙を隈なく見渡し給う瑞御霊・神素盞嗚大神の御心を汲み取り給う大八洲彦命は、月照の神と現れて、五十二歳を越えた赤子の口を借りて述べ立てる。
オセアニアの一つ島にて、黄金の砂を敷き詰めた地恩の郷に三五の教えを開いた五十子姫や梅子姫、小糸姫らが、仁慈無限の元津御神の御心を覚って道に尽くした古き神代の物語である。
黄竜姫(小糸姫)が治める地恩城では、出奔した高山彦の後釜に、清公が任命されていた。しかし要職に上り詰めた清公は思い上がって傲慢な態度を取っていた。
そのために城内は宰相・清公派と、副宰相・鶴公派に分かれて暗黙の対立が起こっていた。
清公と鶴公は二人とも、黄竜姫の侍女・宇豆姫に懸想していた。スマートボールは鶴公派として、強権的に宇豆姫を娶ろうとする清公への批判を、チャンキーとモンキーに披露していた。
そこへ貫州と武公がやってきて、友彦がジャンナイ教徒たちを組織して、仕返しに地恩城へ攻め寄せてくるという噂が立っていることを伝えた。
それを聞いた蜈蚣姫は早速、軍備を整えて迎え撃とうとする。蜈蚣姫はスマートボールに、迎撃の軍備を整えて出撃するように命じると、いそいそと去ってしまった。
そこへ清公が従者をしたがえてやってきて、スマートボールらに友彦軍の迎撃を命じる。しかしスマートボール、貫州、チャンキー、モンキーらから、思い上がった言動を批判されてしまう。
スマートボールはさらに、清公は鶴公にその地位と宇豆姫を譲るべきだ、と迫り、その旨自分が宇豆姫に直談判に行くと息巻く。清公はその場の雰囲気に気おされてしまう。
そこへさらに、鶴公がやってくる。清公は、友彦襲来の一件を持ち出して鶴公に意見を求めるが、鶴公は何事も宰相である清公に命に従う、と述べると、清公は黄竜姫に諮ってくるといってその場を立ち去った。
鶴公を宰相に戴こうとする一同に対し、鶴公はあくまで謙虚の態度を示して、下の者が上の者を使うべきだと持論を展開する。
スマートボールを始め鶴公の徳に感心しているところへ、清公派の金州、銀州、鉄州がやってきて、清公に対する謀反を黄竜姫に奏上するのだ、と言い捨てて行ってしまう。
本文
01 02 〔748〕
蜈蚣姫は、友彦が攻めて来るという噂を黄竜姫に話し、自分に出陣を申し付けるようにと説得していた。黄竜姫は、もし友彦が攻めてきたとしても、あくまで言霊の力で言向け和すだけだと反対する。
あくまで抗戦を主張する蜈蚣姫に対し、黄竜姫は三五教の除名を申し渡した。そして蜈蚣姫を縛するようにと金州を呼んだ。
金州、銀州、鉄州の諌めによって、黄竜姫は蜈蚣姫の除名を解いた。そしてもし友彦が襲来するようなことがあれば、自分が陣頭に立ってあくまで抗戦するつもりだと胸の内を蜈蚣姫に明かした。
そこへ鶴公がやってきて、友彦襲来の噂の真偽を黄竜姫に問うた。蜈蚣姫は、その場にいる金州、銀州、鉄州が他ならぬその報告者だと明かした。鶴公は、三人はこの一ケ月城外に出たことがないのに、なぜネルソン山以西の動静を知っているのか、と三人を問い詰めた。
三人はとたんにしどろもどろになって、答えをはぐらかしている。黄竜姫と蜈蚣姫の前で問い詰められて、ついに三人は、友彦襲来の噂は、鶴公派を出陣させて、その間に清公と宇豆姫を結婚させてしまおうという計略の作り話であったことを白状した。
蜈蚣姫は清公を呼ぼうとするが、鉄州があくまで自分たちが、清公に身を固めてもらって城内を固めてもらおうと思った真心から出た計略だったと有り体に白状したことから、このことは不問となった。
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01 03 〔749〕
宇豆姫は一人述懐の歌を歌っていた。その歌には、宇豆姫が鶴公を慕っていることが歌われていた。
そこへスマートボールがやってきて、宇豆姫の力になりたいと申し出た。宇豆姫は自分の心を見透かされたような気持ちになり、また鶴公派のスマートボールを頼もしく思ったが、その場は単に、神様に感謝を捧げていただけだと答えた。
そこでスマートボールは、宇豆姫が清公と結婚するという城内の噂について問いただした。宇豆姫は即座に否定し、また清公は好かないときっぱり言ってのけた。
スマートボールは宇豆姫を問い詰めて、ついに宇豆姫の口から、意中の人が実は鶴公であることを聞き出した。スマートボールは、自分はこの恋を成就させるために力を尽くすことを宇豆姫に誓った。
そこへ、黄竜姫がやってきた。黄竜姫は人払いをして宇豆姫と二人きりになった。黄竜姫は、地恩城の左守である清公の妻に宇豆姫を任命する、と厳然と言い渡した。宇豆姫は道理を交えた黄竜姫の申し渡しに同意する以外はなかった。
黄竜姫が去った後、宇豆姫はその場に泣き崩れてしまった。たまたま廊下を通りかかった鶴公は、宇豆姫を介抱する。二人は互いに思いを打ち明けあい、互いにその心を知ることができただけで思い残すことはない、と覚悟を決めた。
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01 04 〔750〕
そこへ清公が入ってきて、鶴公と宇豆姫に対して嫌味と皮肉の限りを尽くして罵倒する。そこへまた、黄竜姫が戻ってきた。
清公は、鶴公と宇豆姫の関係を不義であるように黄竜姫に讒言する。そして、鶴公を落としいれようとしてわざと、綱紀紊乱の責任を取って自分が辞職する覚悟である、と黄竜姫の前に言い立てた。
すると黄竜姫はあっさりその言を容れて、清公の職を解いてしまった。鶴公はこの場においても清公をかばおうとする。黄竜姫は、その心に感じて、鶴公を左守に任命した。
鶴公は、清公がその場で解任されてすぐに後釜に据えられた状況を忍びず、あくまで清公を立てようとする。黄竜姫はあくまで鶴公が左守となって宇豆姫を娶るようにと申し渡す。宇豆姫はいたたまれなくなってその場を飛び出し、城門の外へ駆け出してしまった。
清公と鶴公たちは、慌てて宇豆姫の後を追いかける。地恩城は、周りを高山に囲まれていた。宇豆姫は断崖絶壁から谷底の川に向かって身を投げてしまった。地恩城から宇豆姫を追って来た一同はこれを見て、なすすべもなく地団駄を踏んでいる。
一人、スマートボールが谷間に飛び込んだ。スマートボールは岸辺に宇豆姫を救い上げると蘇生させた。そして、いかなる事があろうともよく天寿を全うして神業に仕えなければならない、と宇豆姫を諭した。
スマートボールの真心に打たれて、宇豆姫はお礼を述べた。地恩城に戻ると、スマートボールは腰を痛めていた。黄竜姫は、宇豆姫にスマートボールの看病を命じ、一ケ月にしてスマートボールは回復した。この一件にて、スマートボールの徳望は非常に高まった。
一方、左守の職を解かれた清公は、平役人となってしまった。平役人たちが雑談にふけっている。チャンキーは、清公のみならず、鶴公さえも宇豆姫の危急に何もできなかったと批判をしている。
チャンキー、モンキー、貫州、武公らは、スマートボールこそ左守の職にふさわしいと、建白書を提出することにした。今はすっかり謙虚になった清公も、それを聞いて賛成して署名した。
一方城内では、黄竜姫が梅子姫に左守の後任について相談していた。鶴公はどうしても左守への昇格を固辞しており、もう一ケ月も職が空いたままになっているので、黄竜姫は徳望が高まったスマートボールを左守に任命しようとしていることを明かした。
梅子姫、蜈蚣姫も賛成し、ここにスマートボールは任命されて左守となり、宇豆姫と結婚の式を挙げて、地恩郷の神業に奉仕することとなった。
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02 05 〔751〕
清公は、地恩郷の左守に任命されたが、権謀術数を駆使して宇豆姫と結婚し、権勢を拡げようとしたが、そのためにかえって地位を失ってしまったのは、まったく自分の利己主義の罪のためであると自覚した。
そこで清公は、黄竜姫の承諾を得て、チャンキーとモンキーと従えて、タカの港と漕ぎ出して日の出神の事跡を巡礼し、宣伝の旅に出ることになった。
一行はヒルの港に着き、飯依彦らの事跡を参拝して、クシの滝に向かった。その途上で休息を取っていた。清彦は、自分の悪念から起こったことから、かえって一宣伝使となって宣伝の旅に出る境遇になったことを神に感謝した。
モンキーは、かつて田依彦、時彦、芳彦が日の出神に導かれて改心した酒の滝が近いことを告げた。すると上流の谷間から、人々の鬨の声が聞こえてきた。モンキーを偵察に行かせたが、モンキーは大蛇を見て腰を抜かしてしまう。
チャンキーもモンキーの報告を聞いてその場に腰を抜かしてしまった。清公は二人に対して文句を言いながら一人様子を見に行くと、大蛇を郷人たちが取り巻いていた。
日の出神が渡ってきてから、この滝の酒は涸れてしまった。そのため、この酒を飲んでいた大蛇は業を煮やして、人間の子を襲うようになってしまった。神託を請うと、大蛇は飯依彦の子孫に憑依し、月に一回酒を醸して滝壺に満たすよう要求した。
しかしこれが郷人たちの非常な負担になっていた。そこで遂に郷人たちは、酒に毒を混ぜて大蛇を退治しようとしていたのだった。郷人たちは、大蛇に早く毒が回るように取り囲んで祈願を凝らしていたのであった。
この様子を見ていた清公は体が硬直してしまった。大蛇は苦しみ出して暴れまわった。その尻尾に振られて、清公は空中に飛ばされ、チャンキーとモンキーが腰を抜かしてしまった岩の上に落ちて来てしまった。
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02 06 〔752〕
三人は腰は立たなかったが、口は達者なままだった。チャンキーは清公を皮肉ってからかう歌を歌った。
清公はそれを聞いておかしさに笑いながら、チャンキーとモンキーをからかう歌を歌った。清公が歌い終わると、チャンキーと清公の腰が、にわかに立つようになった。
モンキーはその場から動けないままであった。とうとう自棄になって、清公をからかうおかしな歌を歌いだした。歌い終わるとモンキーの腰もようやく立った。
三人は憎まれ口を叩き合いながら、大蛇退治に郷人の加勢に行くことにし、宣伝歌を歌いながらクシの滝に向かって行った。
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02 07 〔753〕
三人が滝にやってくると、大蛇は毒酒が回ってほとんど半死半生の体であった。郷人たちはとどめを刺そうとやっきになっている。飯依彦らが正に大蛇の鱗の隙間に槍を突き通そうとしていたところに、清公らがやってきた。
清公は、大蛇といえども天帝の分身であることを郷人たちに諭すと、大蛇の頭の上に乗って宣伝歌を歌い始めた。その歌には、郷人たちの言行心の不一致が凝って大蛇となって表れたことが歌われていた。
清公が、心に潜む悪魔を清めて教えに従った言行に立ち返るように、と歌うと、大蛇は縮小してしまい、小さな蛇となってしまった。清公は蛇に引導を渡すと、郷人たちにも、三五教に立ち返って心を根底から立直すように、と諭した。
郷人たちは清公の前に平伏した。清公は、郷人たちに地恩郷に参拝するようにと言い渡した。モンキーを案内者として、郷人たちは船に乗って参詣を果たした。
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02 08 〔754〕
清公はチャンキーと共にクシの滝壺の傍らに庵を結んで禊に励んでいた。地恩郷参拝から帰ってきた郷人たちは、清公に感謝して国魂の宮を修繕して礼拝を怠らなかった。ヒルの郷の黒雲邪気は晴れて、元の楽園となった。
清公は大蛇、悪魔までも神の道に救おうと、宣伝の旅に出た。チャンキーとモンキーに加えて郷人のアイルとテーナを共に加え、セーラン山を登っていった。炎天の山道を進んで行き、玉野ケ原というやや平坦な場所に着いた。そこは黄金の砂が大地一面に敷き詰められた気分の良い地点であった。
はるか前方から猛獣の群れがやってくる気配があった。清公は天津祝詞を唱えようとしたが、舌がこわばって言霊を使用することができなくなってしまった。五人は懸命に心のうちに暗祈黙祷すると、一柱の白狐が現れて五人を森の方の一つの細長い岩窟に招いた。
五人は神恩に感謝した。やがて猛獣の足音が聞こえてきた。岩窟の口から、長い白い毛をもった巨大な狒々が覗き込んだ。清公はようやく言霊が出るようになったので、天津祝詞を奏上した。
しかし狒々はかまわず岩窟の奥に入ってくる。岩窟の奥まで追い詰められ、狒々は清公の手を取って招き、岩窟から引き出してしまった。しかし岩窟を出てみると、そこに居たのは猛獣ではなく、狒々や猩々の群れであった。
五人が天津祝詞を一生懸命に奏上すると、数百の狒々と猩々は面白おかしく踊り始めた。巨大な狒々は、口から猛烈な炎や冷気を五人に吹きかけた。五人はもはや息も切れようというときに、狒々の姿は巨大な白玉となり、狒々たちも無数の玉となって舞い上がり、姿を消してしまった。
後に岩窟の周りには芳香が漂い、微妙の音楽が聞こえてきた。これより五人は心魂がとみに清まり、奥地へと進んでスワの湖のほとりの竜神の宮の祠に到達し、祝詞を奏上した。その夜は祠の前で世を明かした。
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03 09 〔755〕
たちまち満天は墨を流したような黒雲に覆われてしまった。五人は祠の前で涼しく祝詞を唱えれば、黒雲の中から一塊の火光が現れて雷のような轟音と共に落下した。たちまち雲は晴れて辺りは日の光に輝いた。
五人が我に返ると、諏訪の湖面には紺青の波がキラキラと気高く輝いていた。純白の帆を掲げた舟が、多数こちらに向かってやってくる。五人は衣服を脱ぎ捨てて、湖の中にザンブと飛び込んだ。
浅瀬を進んで行った五人は、深みに足を取られて水底に落ち込んだ。五人は、水底から浮かんできた金銀をちりばめた神船に救い上げられて、湖を北へと進んで行った。そして気が付くと、湖中の夫婦島に五人は置かれていた。
ここには大小無数の金銀の蛇が、空き地がないほどに群れて遊んでいた。清公は金色の蛇に口の中に這いこまれ、その胸苦しさで眼を覚ました。チャンキーは蛇を引き出そうとしたが、尾ではねられて隣の島に飛ばされてしまった。
チャンキーが飛ばされた島には金銀のムカデがびっしりと群れていた。ムカデはチャンキーの体に這い登って包んでしまったが、チャンキーは少しも痛みも苦しみも感じなかった。ただそのこそばゆさに、チャンキーは腹をかかえて笑い転げた。
清公たちが最初に置かれた島は男島、チャンキーが飛ばされた島は女島といった。清公はにわかに身体が黄金色に変じ、両眼から金剛石のような光を発した。顔色輝いて荘厳の度を増し、背も一尺ばかり伸びると、アイルを掴んで女島に投げ飛ばした。
アイルもムカデに体を包まれて笑い出した。アイルとチャンキーがこの不思議な出来事について放していると、清公に投げられたテーナが島にやってきた。テーナもたちまちムカデに包まれてしまった。
男島のモンキーだけは、なぜか蛇も近づかなかった。モンキーは、蛇が自分に近づかないのは、自分が善だからなのか悪だからなのか判断がつかず、清公の前に平伏して頼み入るが、清公は目ばかりぎろぎろと動かして無言のまま立ち尽くしていた。
モンキーは、この島の蛇もムカデも悪魔のような感じがしない以上、竜宮に居るからには諸善神の化身に違いないと結論し、岩の上に祝詞を上げて諸手を組んで首を垂れ、考え込んでいた。
すると美妙の音楽が眼下から聞こえてきた。驚いて見れば、崇高な女神が舵を取って、厳たる漆塗りの船が進んで行くのが、パインの茂みの間から見えた。船中には、清公、チャンキー、アイル、テーナの四人が薄絹を身につけ、瓔珞の冠を戴いて、各々笛や笙やひちりきを奏でながら、愉快気に湖面を進んでいる。四人の肌は水晶のように透明に清まっていた。
モンキーが思わずアッと叫ぶと、四人は金扇を開いてモンキーを差し招く。船は悠々と波の上を進んで姿を隠してしまった。モンキーは我が身を省みれば、赤銅のような肌に毛がボウボウと生え、嫌な臭いを放出していた。
モンキーは自分のほうが間違っていたことに気付き、磯端に走ると全身を清めて端座し、瞑想にふけった。涼風が吹き、モンキーは気分が晴れてきた。しかし湖面を行く神船はモンキーに一瞥もくれずに過ぎてゆく。
モンキーがやや不安にくれて、船が消えた方向を見ていると、水面から緑毛の亀が浮かび上がり、島に駆け上がって走り出した。モンキーはその後について行く。亀は大木に登って、そこから落ちた。モンキーも同じように木に登って落ちた。
モンキーは亀の真似をしてもがいたり、付いて湖に飛び込んで泳いだ。モンキーが手足がだるくなって泳げなくなると、亀はモンキーを待って留まった。モンキーが亀に掴まると、亀は水中深く潜っていった。モンキーは必死でしがみついた。
モンキーは今度は女島に居て、亀の後をついていった。数多のムカデもその後に続いた。亀は島の頂上の大木の梢から、水面に飛び込んだ。モンキーは遥か下の水面を見て恐ろしさを感じたが、死に物狂いで亀と同じく頭を下にして飛び込んだ。
気が付くと、モンキーは金色の亀にまたがって紺碧の湖面を悠々と進んでいた。亀はいつしか金銀珠玉をちりばめた神船となっていた。
モンキーは初めて、何事も一切万事神に任せれば良いのだ、ということに気が付いた。蛇の島では蛇の心、ムカデの島ではムカデの心になって神様にお任せして行動してこそ、神の慈悲を体現できるのだ、ということを悟った。
モンキーは四人に再び会えることを願い、悔悟の涙を絞って合掌し、天津祝詞を奏上した。微妙の音楽が聞こえて麝香の芳香が漂い、その身はたちまち薄絹に包まれた。天上を行くごとき爽快な気分に包まれた。
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03 10 〔756〕
スワの湖の男島と女島は、神に仕える諸神が金銀の蛇・ムカデとなって三寒三熱限りない苦痛を嘗めて世を救うという、諸善竜神の修行場であった。清公に入り込んだ蛇は、玉依姫の分霊・玉永姫の化身であった。
アイルやテーナやチャンキーを女島に投げて苦しい修行をさせ、水晶の身魂に磨き上げた。モンキーはひとり善悪の判断に迷ったが、亀によって導かれ、心の闇を照らされた。
モンキーは神船に乗って進み、遠浅の湖岸に向かって来た。金砂の磯端に着くと、モンキーは飛び降りた。美しい湖面の光景を眺めながら進んで行くと、突然後ろから、虎の両手がモンキーの肩を掴んだ。モンキーは引かれて林の中に導かれ、瑠璃のごとき岩石の元に穿たれた岩窟に導き入れられた。
モンキーはいかなることが出来しても、理智を捨ててただ神に任すべく決心を固めていた。ただ自然に引かれるままに進んで行った。
モンキーは光り輝く洞穴の中をきりきり舞いしながら進んで行く。何時の間にはモンキーは、美しい宝玉で飾られた宝座の上に端座していた。洞穴内の遥か向こうから、五つの玉の光が目も眩むばかりに照らしてきた。
モンキーは思わず目を閉じたが、玉の光る方を眺めてみると、紫の玉には初稚姫、赤い玉には玉能姫、青い玉には玉治別、白い玉には久助、黄色い玉にはお民の顔が映っていた。モンキーはたちまち精神が宙に浮き上がる如く感じ、その場に倒れてしまった。
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03 11 〔757〕
地恩城では、黄竜姫が配下を従えて月見の宴を催していた。突如、黄竜姫は顔色青ざめ、友彦とその軍勢の幻影を空中に見て、高殿から転落して人事不省となってしまった。
しかし不思議なことに、配下の者たちからは黄竜姫は依然としてその場にあるが如くに見えていた。蜈蚣姫だけには、転落した黄竜姫が見えていた。蜈蚣姫は慌てて駆け下りて行く。
これは二人の執着心の鬼によって、幻覚が見えたのであった。またその罪悪より成れる肉体は、千尋の谷底に落とされ、後には二人の本守護神のみが残っていた。
本守護神となった黄竜姫はますます荘厳の度を増し、月の大神様を宴の肴として宴を開いたことを悔いた。一同は宴を中止し、梅子姫は導師となって神言を奏上した。以後は月見の宴を為すことは厳禁された。
すると貫州と武公が慌てて注進にやってきた。二人は、城外に友彦の大軍勢が押し寄せて城は陥落寸前だという。スマートボールは黄竜姫の命で様子を見に行くと、城外には誰もいなかった。
スマートボールは戻って来て貫州と武公を平手打ちすると、二人はようやく我に返った。二人は取り越し苦労が募って夢を見たと一同に詫びた。
本文
03 12 〔758〕
地恩城の広場でマール、貫州、武公が雑談にふけっていると、友彦が女房のテールス姫を連れてたった二人で城にやってきた。友彦は旧知の貫州と武公に挨拶するが、貫州と武公は友彦に邪険にして城内に入れまいとする。
友彦は自分が改心したことを訴え、門内に入ったところ、門番たちは友彦とテールス姫を突き倒して打ち据えた。しかし友彦とテールス姫は、感謝祈願の祝詞を唱えるのみだった。
いつの間にか貫州たちも、友彦夫婦と共に感謝祈願の祝詞を奏上していた。そこへ通りかかった鶴公は、城内に戻って黄竜姫に見たことをつぶさに報告した。鶴公は友彦を疑っていたが、黄竜姫は自ら友彦夫婦のところに赴いた。
友彦はテールス姫が熱心な三五教の信者となり、今は自分の神務を補佐していると黄竜姫に紹介した。黄竜姫は二人を城の奥殿に招きいれた。
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04 13 〔759〕
招き入れられた友彦を、蜈蚣姫やスマートボールはやや疑いの面持ちで迎えたが、黄竜姫は、友彦が真に改心をしてテールス姫と共に地恩城にやってきたことに対し喜びを表した。
友彦は黄竜姫と蜈蚣姫に、来し方の悪事を心から詫びて悔悟の涙を流した。それに対して黄竜姫は心から打ち解けた様を表した。
友彦は地恩城と讃える歌を歌い、自分が開いたネルソン山以西の地域も三五教の光によって救うように、黄竜姫に懇願した。それに対して梅子姫は、メソポタミヤの顕恩郷の故事を引き合いにした歌を歌って、友彦の神業を讃えた。
友彦夫婦は黄竜姫の部下となり、全島に三五教を流布することとなった。一同は宣伝歌を歌い、友彦夫婦は貴賓として地恩城に数日間滞在した。
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04 14 〔760〕
晩夏の頃、地恩城では友彦夫婦のために園遊会が開かれた。梅子姫は中央の蓮華岩に立って面白い歌を歌って興を添えた。また蜈蚣姫はこれまでの事を歌に歌いながら、面白い手つきをして踊って見せた。その他の人々も歌いかつ踊った。
園遊会が終わって幹部たちは居室に戻っていった。草の上ではマールが酔ってくだを巻いている。蜈蚣姫は昔はバラモン教で羽振りを利かせていたが、娘が三五教の女王になったら、俄かに心機一転したのが気に入らない、という。
貫州はそれをたしなめている。するとネルソン山の峰の上に、異様の女神が七八人現れ、瞬くうちに荘厳な神殿が聳え立つ蜃気楼を武公が発見した。
武公の注進により、幹部たちも高殿からこの明瞭な蜃気楼を眺めた。そこには諏訪の湖にて、多数の女神に手を引かれた清公ら四人の宣伝使が、何事か神勅を受けているのが見えた。
黄竜姫はこれを見て、この有様を言霊歌に歌った。そして、自らも諏訪の湖に赴いて珍の宝を戴き、自転倒島に奉る神業に着手しようと呼びかけた。黄竜姫たちは早速旅装を調えて出発した。
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04 15 〔761〕
黄竜姫、蜈蚣姫、梅子姫は、友彦とテールス姫を従えてジャンナの里にやってきた。一行は友彦の館で歓待を受けた後、里人に洗礼や宣伝歌を授け、玉野ケ原にやってきた。
諏訪の湖のほとりの祠に参拝すると、五人は湖で身を清めて五日五夜禊を修した。夜明けに大鳥が飛び立つ西北を見ると、向こうから鳥の背に乗って、四五人の神人がやってくるのが見えた。
それは金色の霊鳥・八咫烏に乗った、玉治別、初稚姫、玉能姫、久助、お民の五人であった。一行はこの姿を見て驚きまた喜んだ。
一行は湖を渡ろうと思案に暮れている。黄竜姫は翻然として悟り、名誉心を捨てて身魂の向上のために徹底的に修行する心持を露にした。すると梅子姫は、その言葉をずっと待っていたのだと厳然として、しかし微笑を浮かべながら明かした。
続いて友彦も、ジャンナの里で救世主然としていた心の罪を懺悔し、梅子姫に大神様への罪の赦しのお取り成しを願い出た。梅子姫は嬉し涙で友彦を赦した。
続いて蜈蚣姫も娘への愛着心や、傲慢からこれまで梅子姫を見下していたことを懺悔し、梅子姫は赦した。続いてテールス姫も懺悔をなし、梅子姫はもっとも罪が軽いと受け入れた。
梅子姫は湖面に向かって暗祈黙祷した。すると西北の空から、幾百もの大鳥がこちらに戻ってきた。
本文
04 16 〔762〕
梅子姫が湖面に向かって二三度手招きをすると、金銀珠玉を散りばめた神船が現れた。清公、チャンキー、モンキー、アイル、テーナの五人が船を操っていた。一同は五人に会釈をして船中に乗り込んだ。
船は、雲を圧して立つ朱欄碧瓦の楼門の近くの磯端に着いた。清公は一同を手招いて楼門に導いた。門の左右には白衣の神人が立っていて、幣と塩水で一同を清めた。
数町進むと、黄金の中門に着いた。白髪の神人が一同に手水を使わせた。その先は、瑪瑙やしゃこの階段を幾百段も登っていった。山腹の聖域からは、諏訪の湖が遥か下に見えた。
しばらくすると十二人の女神が一同を迎えに来た。一同は無言のまま奥庭に進んで行く。白木造りの門を開けたのは、初稚姫、玉能姫、玉治別、久助、お民の五人だった。やはり無言のまま、一同は殿内に迎え入れられた。
白木の扉を開いて、女神・玉依姫が現れた。玉依姫は、五人の侍女に天火水地結の五色の玉を持たせていた。そして紫の玉を、初稚姫を経由して梅子姫に渡し、赤色の玉を玉能姫を経由して蜈蚣姫に渡し、青色の玉を玉治別を通して黄竜姫の渡し、白色の玉を久助を通して友彦に渡し、黄色の玉をお民を通してテールス姫に渡した。
無言のまま厳粛に玉が手渡された。玉依姫は侍女と共に奥殿に姿を隠した。梅子姫らもそのまま戻って諏訪の湖辺に着いた。
このとき、金の翼を持つ八咫烏が飛んできて、梅子姫、黄竜姫、蜈蚣姫、友彦、テールス姫、玉治別、初稚姫、玉能姫、久助、お民の十人を乗せて無事に由良の聖地に帰還した。
銀色の大鳥・アンボリーは、清公、チャンキー、モンキー、アイル、テーナの五人を地恩城に送り届けた。清公は地恩城の司となり、スマートボールと宇豆姫夫婦はジャンナの里を管掌することになった。
また清公の発案により、地恩城の最も風景のよい高地に高殿を造って、国魂神である真澄姫神を鎮祭し、飯依別神を宮司とした。清公によって竜宮島は全島三五教に統一され、国民は安泰となった。
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05 00 - 本文
05 17 〔763〕
高姫、黒姫、高山彦は、部下のアールとエースを連れて、大船に乗ってタカの港を出港していた。太平洋を横切って、淡路の洲本に帰還し、酋長の東助館にやってきた。
東助館の門番として、虻公と蜂公が控えていた。高姫は傲然として中に入れるように命令するが、虻公と蜂公は、東助から高姫が来ることを言い含められていたようで、取り合わない。
虻公と蜂公は、高姫を何とか誤魔化してこの場に釘付けにしようとするが、聖地で御用があることを匂わせる。高姫は勘違いして東助館の中に秘密があると思って入ろうとする。そこへ東助の妻・お百合が騒ぎを聞きつけて出てきた。
お百合は、館の中は至る所に暗渠があって、地図がないと歩けないのだ、と脅すと、ようやく高姫はあきらめて去っていった。
一方、生田の森の杢助館には、国依別、秋彦、駒彦の三人が留守をしていた。国依別は、今回の竜宮島の神宝納めの神業のために聖地に行かなければならないため、秋彦と駒彦に留守を頼む。
三人が高姫の噂をしていると、窓の外に高姫一行が夜叉のような顔をしてやってくるのが見えた。駒彦は二人を奥の間に隠れさせて、自分が応対係りになると買って出た。
駒彦は高姫らを馬鹿な話で煙に巻こうとする。その中で、すでに神宝は聖地に納まったことを仄めかす。高姫は奥の間にも人がいることに気が付き、国依別と秋彦を見つける。二人は鼠の真似をして高姫を馬鹿にする。
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05 18 〔764〕
高姫、黒姫、高山彦、アール、エースは一生懸命、国依別と秋彦を元の人間に戻すようにと祈願を凝らし始めた。国依別と秋彦は起き上がると、飛び上がって高姫らをからかう。
高姫は、日の出神の神力で二人を畜生道から救い出したと悦に入っている。そして、そのまま二人から玉のありかを白状させようとする。駒彦は、二人は高姫たちをからかっているのだ、と忠告するが、高姫は耳を貸さない。
高姫が祈願をこらして霊を送ると、国依別は再度山の大天狗と名乗って、偽の神懸りを始めた。問答をしているうちに、国依別は面倒くさくなって白状するが、玉のありかを神懸りから聞き出したい高姫は、信用しないで詰問する。
仕方なく国依別は、高姫、黒姫、高山彦の三人に、三つの玉のありかをそれぞれ明かすと言ってこの場を逃れようとする。そして一人一人に、それぞれ玉のありかは竹生島の社殿の下に埋めてある、と同じ事を囁いた。
高姫、黒姫、高山彦は、国依別の偽の託宣を信じて、それぞれ互いに同じ場所に向かって走って行ってしまった。一方国依別と秋彦は、駒彦に留守を任せて聖地の神業に参加するために急いで出て行った。
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05 19 〔765〕
駒彦は、高姫が欲に目が眩んで東助館でなぶられ、また杢助館でも騙されてまんまと竹生島へと追いやられた様を歌に歌った。
そして、騙されたと知った高姫が聖地に戻ってきたら、国依別や秋彦と面倒を起こすことが今から思いやられる、と旅の見送りの歌を歌って両人の門出を見送った。
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