巻 | 篇 | 篇題 | 章 | 章題 | 〔通し章〕 | あらすじ | 本文 |
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- | - | - | 山河草木 酉の巻 | - | 本文 | ||
- | - | - | 序文 | - | 山河草木第一巻(六十一巻)の口述を始めたのが大正十二年の夏、それから口述の七十二巻目にあたる本巻を終えたのが、大正十四年八月二十五日(旧七月六日)。その間にあったことは
エスペラントの講習・宣伝
蒙古入り
世界宗教連合会、紅卍字会・普天教との提携
万国信教愛善会の創立
人類愛善会の発起
天恩郷光照殿建築工事
その他海外宣伝使の派遣 |
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- | - | - | 総説 | - | 場面をインドに移して、デカタン高原のトルマン国の物語が始まります。
トルマン国を狙うバラモン軍の大足別と、その手下スコブツエン宗の妖僧キューバーの陰謀、王妃・千草姫に憑依した高姫の活動、向上主義者を称する国士の活躍、国難に殉じる英雄ジャンクの働き、等々を記しています。 |
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01 | 00 | 花鳥山月 | - | 本文 | |||
01 | 01 | 信人権 | 〔1768〕 | 物語の背景
バラモン教の根源地たるインドは、七千余国を一団となす地であり、浄行(僧侶階級?)、刹帝利(クシャトリア=武士)、首陀(シュードラ=隷属民)、毘舎(ヴァイシャ=商人)、その他の階級が設けられていた。
一方、ウラル教がデカタン高原の一角に勢力を築き、バラモン教の本拠ハルナの都に向かって教線を拡大しつつあった。
この状況に、バラモン教の大黒主は「宣伝将軍」を各地に遣わし、とくに大足別将軍に数千の兵を与え、討伐を主目的として出発せしめていた。
舞台となるトルマン国は、デカタン高原の最も土地の肥えた所にあり、国土は広くはないが、かなりの人口を持っている。そして、地理上、代々ウラル教を報じていた。
大黒主は、トルマン国にもバラモンの勢力を広めるため、寵臣キューバーに命じて、スコブツエン宗という、名前は違うが内容は同じ一派を立てさせ、トルマン国にて布教させた。しかし、王家・有力者の人々はスコブツエン宗に入信することはなかった。
キューバーは、大黒主の寵臣として、また密命を受けた身として、特殊の権利と地位を与えられていた。バラモン軍の将軍たちでさえも、キューバーに従わざるを得なかった。
キューバーのスコブツエン宗は、バラモン教に輪をかけて難行・苦行を重んじる残酷な宗旨である。
ある小さな山里の古ぼけた祠の前で、二人の三五教徒の首陀、レールとマークが、バラモンの批判をしている。その現世的なやり方、差別をあげつらい、首陀向上運動の進展、信仰の独立を目指している。
そこへ、スコブツエン宗のキューバーが現れた。首陀たちはにわかに話題を転じ、さっさと逃げてしまう。
キューバーは、耳さとく大黒主への反逆を聞き取って姿をあらわしたが、レールとマークもいち早く山林に姿を隠してしまった。レール、マークは再びキューバーの悪口に花を咲かせるが、またもやキューバーが追ってくるのを認めて、山林の奥へ逃げてしまった。 |
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01 | 02 | 折衝戦 | 〔1769〕 | キューバーは、大足別の使者と称してトルマン城にやってきて、スコブツエン宗に国を挙げて改宗しなければ、軍隊を差し向ける、と脅す。
王をはじめ左守フーラン・右守スマンヂーら重臣が集まり、善後策を協議していた。
王妃千草姫・右守は慎重派であったが、主戦派の王と左守は慎重論を受け入れない。右守はかえって王妃と不義の疑いを受けてしまう。そして王と左守は戦の準備を始めてしまったのであった。
キューバーは護衛を引き連れて城の奥に入り来たり、返答を強要する。千草姫はキューバーをなだめ置いて時間を稼ぎ、一方右守は再び王と左守に慎重論を採るよう、説得に走る。
しかし、右守は王の逆鱗に触れ、手打ちとなり絶命してしまう。
千草姫は形成不穏を感じ、キューバーを釘付けにするためにキューバーを密室に伴った。 |
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01 | 03 | 恋戦連笑 | 〔1770〕 | 千草姫はキューバーに惚れたふりをして、逆に彼を虜としてしまう。海千山千のキューバーも、千草姫の美貌にしてやられてしまった。
千草姫は腕を握る振りをして、柔道の技で脈どころを握り締め、キューバーを気絶させてしまう。城の外からはときの声が聞こえてくる。 |
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01 | 04 | 共倒れ | 〔1771〕 | 一方、太子チウインは妹チンレイ、右守の娘ハリスと共に、キューバーが談判にきた当初から様子を察知し、王と左守には内密で、全国から兵を招集すべく密かに動いていた。
一方、大足別はキューバーが戻ってこないので、城を攻めるわけにもいかず、こう着状態に陥っていた。
千草姫に一度は気絶させられたキューバーは正気を取り戻し、今度は自分が姫を気絶させようと躍起になっている。
その間に、王は密書により、太子が国内より兵を集めて合流することを知る。またそれは、千草姫・右守の先見の明による計略であったことを知る。王と左守は、はじめて右守の心を知り、その死を悼んだ。
一方、千草姫は気絶したふりをしたりしてキューバーをからかっていたが、最後に双方同時に手を握り合うということになった。キューバーも千草姫も厳しく相手の手を握り合い、二人とも気絶してその場に倒れてしまった。 |
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01 | 05 | 花鳥山 | 〔1772〕 | 五色の雲がたなびき、鳳凰、孔雀ほか何百種もの鳥が舞い、地は一面の緑、空には色とりどり、紫・浅黄・白・黄色のめでたい雲がたなびいている。
紅の花が咲きにおい、胡蝶は花に遊び、天国浄土の光景を眺めつつ、地上三、四尺の空中を進んでゆく。
前方には黄金の甍が日に照り輝く、荘厳な世界がある。左手には青い海原、舟、五色の鳥。
涼しい風が常に吹いて、なんとも言えぬ芳香を送っている。
旅人は槍を片手につきながら、青草茂る山の中腹に、今きた道を眺めながら、タバコをくゆらし休憩している。
そこへ、おーい、おーいと声をあげながら、登ってくる貴婦人がある。よくみればその貴婦人は千草姫であった。
千草姫は旅人のそばに来て、満面の笑みにて話し掛ける。
千草姫:右守のスマンヂー様、あなたはどうしてこのようなところにいらっしゃったのですか。
スマンヂー:てっきり、軍議の最中ガーデン王の手にかかって死んだと思ったのだが、あれは夢だったのだろうか。しかし合点のいかないのは自分の身の様子、名も知らない清い聖地にいるのはなぜだろう。また、あなたがどうして私の後を追ってこんなところへおいでになったのだろうか。
千草姫:ここは天界の第三段の浄土です。私は寿命が尽きて、主の神様により、浄土住まいを命じられました。また、伊吹戸主の神様にお伺いしたところ、あなたも天界に住まうべき身の上であるとのことです。
千草姫:こうなった上は、神のお引き合わせ、私とガーデン王は意思想念を異にし、霊界では添えない定めです。あなたとここで夫婦となって、天国浄土の御用をいたしましょう。
スマンヂー:ああ、有難いことだ、実を言えば、私は現界であなたを恋しておりました。しかしながら、現実界のしがらみにより、思いを伝えることさえできませんでした。こうやって神様から定められた縁であれば、そのようにいたしましょう。現実界にて善行を尽くした報酬が今ここに実り、二人は喜びの苑にあって、時間空間を越えて永遠に、嬉しく楽しく暮らしましょう。ああ惟神惟神、御霊の恩頼をほぎまつります。
このように、お互いに歌い交わしているところへ、ダイヤモンドのごとく白金光のごとく天空を輝かし、二人の前に火の弾となって落下してきたのは、エンゼル・言霊別命であった。
言霊別は二人を第二霊国の花鳥山に案内する。スマンヂーは、なぜ俗人の自分が、宣伝使の楽園である霊国に招かれるのか言霊別に尋ねる。
言霊別:霊国は、宣伝使、国民指導者の善良なる霊の永久の住処である。今日の現実界の宣伝使・僧侶・牧師などは地獄に籍を置いている。一方スマンヂーは生前宣伝使ではなかったけれども、現実界の最善を尽くし、正守護神が霊国に相応していた。宇宙はすべて相応の理によってなりたっており、この花鳥山も、スマンヂーの精霊が、現界にありながら、作り上げていたものである。
言霊別は去り、二人はここに祝いの歌を歌い、霊国に夫婦となって永久に暮らすこととなった。 |
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01 | 06 | 鬼遊婆 | 〔1773〕 | 場面は変わって、気味の悪い黄昏時の情景。一面の枯草に血生臭い風。烏は鳴き、不気味な虫が草原一面に人の血を吸おうと潜んでいる。
そこへ高姫がやってくる。高姫は、三年間、中有界にとめおかれて、修行を命ぜられていたのであった。高姫は一人の亡者を弟子に連れ、自分は現界に立ち働いているつもりで、道行く人をウラナイ教にひっぱりこもうと待ち構えていたのであった。
弟子のトンボはあまりの閑古鳥と高姫の人使いの荒さに文句を言い、逃げようとしたところをつかまれて、ばったり倒れてしまった。
そこへやってきたのは、八衢に彷徨っているキューバーであった。高姫はこれ幸いとキューバーに宣伝をはじめ、自分のあばら家に引っ張り込もうとする。
キューバーは宿を探していたところへ、渡りに舟と、高姫についていく。トンボは、二人がどんな相談を始めるやら窺いに、高姫の破れ屋に足音を忍ばせてつけていく。 |
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01 | 07 | 妻生 | 〔1774〕 | 汚く醜いあばら家も、御霊の相応によって、高姫とキューバーには美しい御殿のように見えるのであった。
そして、いつのまにかキューバーの目には高姫が千草姫のように見えてきた。一方、高姫にはキューバーが時置師の杢助に見えてきた。お互いに思う人の幻影を見つつ、二人は辻褄の合わない勝手な応答をしながら、抱擁して眠ってしまった。
外にいたトンボは石を拾って手当たり次第に投げつける。キューバーと高姫は怒ってトンボを追いかける。トンボは八衢の関所の門につきあたって倒れ、つかまってしまう。
トンボは自棄になって二人の悪行をののしりたてる。その声に、八衢の門の守衛が出てきて、三人が居るのは冥土であることを諭す。そして、高姫の宿るべき肉体は千草姫であることを告げる。
途端に、キューバー・高姫ははっと気づくと、トルマン城の千草姫の部屋に倒れていた。こうして千草姫の肉体に高姫の精霊が入り込んだのである。これより姫の言行は一変する。 |
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01 | 08 | 大勝 | 〔1775〕 | 太子チウインは王女チンレイ、右守の娘ハリス将軍、勇将ジャンクを従え、三五教の宣伝使照国別・照公とともに、二千五百騎を駆って、トルマン城を包囲する大足別軍を殲滅しようと、進軍してきた。
大足別は援軍が来たのを見て驚き、もはやキューバーの安否を省みず城を攻め落とすよう、命令を下した。
戦いの中、左守は奮戦の末、敵のために命を落としてしまった。大足別は左守軍の敗北につけこんで城門まで攻め寄せ、トルマン城は危機に陥る。
すると城門に千草姫・キューバーが現れ、城はすでに奪い取ったと大足別に告げる。この虚報に大足別は軍を返して、援軍を迎撃する。しかし、背後からガーデン王の守城軍が攻撃し、大足別軍ははさみ打ちにあって敗走する。
王は勝利の舞を舞うが、敗走した大足別軍が市街に火を放ち、人々の悲惨の声が聞こえてくる。照国別をこの様をみるや、まっしぐらに物見櫓に駆け上り、照公とともに天の数歌、続いて天津祝詞を奏上した。すると火災はたちまちにして静まった。
二人の活躍に、王をはじめ一同は手を打って歓喜した。
左守・右守は特別に王家の墓所に葬り、国家の守護神として祠を建て、永遠に祭祀することとなった。また、王は、照国別・照公の仁義・神徳に感じて、三五の大神を鎮祭することを誓った。
一方、王は居間にいた千草姫とキューバーを詰問するが、その場は千草姫の弁解を信じ、キューバーは許されることとなった。
キューバーは大足別が敗走したことにより、自分の立場を心配するが、千草姫=高姫は、逆にトルマン国の乗っ取り、ひいてはインドの全土の征服をもくろむ。
千草姫は後からやってきた王子、王女、ハリスらも煙に巻いてしまい、キューバーを擁護する。 |
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02 | 00 | 千種蛮態 | - | 本文 | |||
02 | 09 | 針魔の森 | 〔1776〕 | ガーデン王は忠義の英霊、左守・右守のためにハリマの森の奥深くに社殿を造営する。そして、照国別を斎主として祭典を執り行った。
同席していたキューバーは、三五教の照国別が斎主を務めたことに怒り、祭りの最中に祭壇に駆け上がり、照国別を罵倒した上、冠を叩き落す。
皆は、キューバーのあまりの行いに驚きあきれ、照国別がどうキューバーに対処するかと注目するが、照国別は冠を落としたまま、何事もなかったかのように悠然と祭りを執り行う。
照国別は退場するが、キューバーはその進路に両手を広げて立ちはだかり、またもや罵倒する。ついにチウイン太子はがまんできず、ジャンクに命じてキューバーを縛り上げ、城の牢獄に入れてしまう。
祭典に出席していた市民・場内の重臣たち一同、このさまに大いに喜び、溜飲を下げた。
以前、キューバーに詰問された向上運動主義者たちは、キューバーの投獄を喜びつつも、このまま生かしておいては後の災いになるだろうと、早くもその後のことを心配している。 |
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02 | 10 | 二教聯合 | 〔1777〕 | 千草姫は、キューバーを差置いて照国別が斎主に選ばれたことに腹を立て、祭典に出席せず、自室に閉じこもっていた。
祭典を終えて王、太子、重臣たちが城に戻ってきて、玉座の次の間で直会を開き、今日のありさまを語り合っている。
千草姫は潜んで聞き耳を立てている。そして、キューバーが投獄されたと聞いて、照国別を排除し投獄して仇をうとうと、内に激しい怒りを宿す。
王は祝歌を歌う。
遠き昔より、ウラル教を奉じて治めて来たトルマン国も、バラモン教やスコブツエン宗らの邪教が入り来たり、敬神・尊祖・愛国といった心も消え失せてきた。
強いもの勝ちの世に、コミュニズム(共産主義)、アナーキムズム(無政府主義)、ソシャリズム(社会主義)等の悪思想がはびこり始めた。
そこへ、スコブツエン宗が大足別の武力をもって、トルマン国を脅かしたのが、今回の戦争であった。
ところが、千草姫に丸め込まれるや、一転大足別を裏切って身を転じる変わり身は、何としたことだろう、油断のならないやつだ。
それだから、バラモン軍を退けトルマン国を助けてくれた照国別に斎主をお願いしたのだ。
祭典では、ウラル神と三五教の大国治立大御神・神素盞嗚大神が納まったことを見て、キューバーは怒り、乱暴狼藉を働いた。
彼が前非を悔いるまでは、決して牢獄から出しはしない。
そして今日からトルマン国は、三五教とウラル教、二つの教えをいただき、世の大本の神を祭って国民を導いていくのだ。
また、照国別は歌う。
自分、照国別も、昔は梅彦という、ウラル教の宣伝使であった。竜宮島へ渡り、またペルシャの海に来たり、終には暴風に遭って九死一生の時、三五教の宣伝使・日の出別の言霊によって三五教となった。そして照国別という名前を頂いたのであった。
ここ、ウラル教を頂くトルマン国の救国軍に加わったのも、大神がお引き合わせになったことでしょう。
人間界では、ウラルと三五の教えは二つであるけれども、世界を作った大本の誠の神は一柱である。だから、何れも同じ神の道として、祭典を司り参加できない理由はないのである。
これからは万教を一つになして、愛善の神の御徳を遍く宣伝し、神政成就に使える覚悟です。
ここに自分の抱負を述べると共に、王室の永遠の栄えをお祈り申し上げます。
チウイン太子は歌う。
富み栄えたるトルマン国を奪い取ろうと画策したのが大黒主であり、その手先がキューバーである以上、キューバーの悪行は天地も許さない大罪である。
実は、キューバーをどうしたらよいかと照国別・照公と計り、神に祈ったところ、夢のお告げに、必ず明日キューバーを縛れ、と現れた。
もうこうなった以上、母・千草姫の怒りを買うは火を見るよりも明らか、しかしながら国家を救うためには如何ともしがたかったのである。
父王、照国別よ、キューバーの処遇の理由をこの通り、今ここに陳謝いたします。
さて、三五教とウラル教はここに連合して、トルマン国はもちろん、七千余国のインド全土に神の教えを伝え、一日も早く神国成就の業に仕えるべきである。
かく、神の前に自分の赤心を明かし、誓います。
するとその場へ千草姫が現れ、王の隣に座を占めた。千草姫は夜叉のごとき勢いで、怒りで顔を真っ赤にし、目は血走っていた。この突然の出現に、座は異様な空気に包まれてしまった。 |
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02 | 11 | 血臭姫 | 〔1778〕 | 突然宴の間に現れた千草姫は、キューバーの投獄の沙汰について、王、太子、ジャンク、照国別を非難し、皆にさんざん悪態をついて退出する。
あまりのことに王は怒り心頭に達し、また照国別に無作法をわびるが、逆に照国別は、慈悲の道に従い、キューバーを釈放するように提案する。
明日、ジャンクが牢獄に行ってキューバーを解放する手はずとなって参会するが、太子はひとり心のうちで、悪人キューバー釈放が気に入らない様子である。 |
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02 | 12 | 大魅勒 | 〔1779〕 | 一方、ハリマの森には、覆面頭巾の大男が二人、ひそひそと何かを話し合ってる。これは、向上主義運動家のレールとマークであった。
レールとマークは、自分たちを迫害していたキューバーが太子の命によって獄につながれたことを喜ぶ。
一方でこのままにしておけば、再び釈放となったときにまた悪事を画策するだろうと考え、今のうちにキューバーを獄から奪い取り、拘束してしまおうと、牢獄の裏門にやってくる。
そこへ、同じくキューバー出獄後の成り行きを案じていた太子がやってくる。太子は物陰よりレールとマークの会話を聞き、二人の志に賛成し、今後の援助を誓う。
レール・マークはまんまと牢番の目を盗んでキューバーをかどわかし、荒井ケ嶽の岩窟にキューバーを放り込んでしまった。
夜が明けて、ジャンクは昨日の取り決めどおりキューバーを釈放しようと牢獄にやってきたが、破獄騒動ですでに大騒ぎとなっていた。
ジャンクはあわてて王に注進にくるが、王と太子は平然としていた。千草姫は太子の態度があやしいとにらんで詰問するが、太子は知らぬ振りをして答えない。
千草姫はその尋問の間に、自分は大みろくの生宮であると口走り始める。 |
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02 | 13 | 喃悶題 | 〔1780〕 | 千草姫は自分の部屋に、故・左守の妻モクレン、娘のテイラ、故・右守の娘ハリスを集め、ご馳走を振舞っている。
千草姫は、3人に自分は今日から三千世界の救世主、底津岩根の大みろくの霊体、第一霊国の天人、日の出神の生宮であると宣言する。
3人はあまりのことに顔を見合わせるが、千草姫は一人一人詰問をはじめる。
3人とも、自分の主君である王妃の言葉とて、否みがたく、絶対服従を誓ってしまう。
千草姫は、テイラにキューバーの捜索を命じ、ハリスには自分の邪魔をする太子を誘惑するように命じ、散会する。 |
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02 | 14 | 賓民窟 | 〔1781〕 | テイラとハリスは、千草姫の変わりよう、また受けた命令のあまりのことに、太子に相談にやってくる。
太子は千草姫が発狂したと見なして、テイラ・ハリスに向上主義者レールとマークのところに隠れるように薦め、紹介文を書いて二人に渡す。
二人は貧民窟のレール・マークの隠れ家に行き、かくまわれることとなった。 |
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02 | 15 | 地位転変 | 〔1782〕 | 千草姫は王に対して、自分を神として崇めるように強要している。王は姫が発狂したと思い、狂人に下手に逆らってますます病気を強めてしまわないようにと、黙っていうことを聞いている。
千草姫は平伏した王の頭に左右の足を交互に乗せてうーんと唸った。千草姫は、つま先から王に悪霊を注入したのである。これによって王はがらりと心気一転し、千草姫を活き神と信じるようになってしまった。
千草姫は、三五教の宣伝使、照国別・照公を投獄すること、太子と王女チンレイを修行という名目で城から追い出すこと、またジャンクを数日のうちに追放するように、と命じる。
太子と王女は、レールとマークをたよって城を出る。 |
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03 | 00 | 理想新政 | - | 本文 | |||
03 | 16 | 天降里 | 〔1783〕 | 太子は貧民窟の有様を見て、国の改革の思いを新たにする。
そこへ、番僧が人員調査のためにやってくる。レールとマークは、太子一行を自分の妻と友人として番僧に説明する。
太子は、この番僧がむしろ向上主義運動者たちに共感しているのを見て取って、自分の素性を明かして仲間に誘う。
番僧テルマンは承諾して、レール・マーク・太子たちの仲間となる。 |
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03 | 17 | 春の光 | 〔1784〕 | 千草姫はキューバーの行方が依然としてわからないため、ますます逆上し、照国別、照公に残虐な扱いをするように獄卒に命じた。また、これまでの旧臣を殲滅しようと計ったりと、無道の行いがはなはだしくなってきた。
このさまを見て太子は、レール、マークに命じて、千草姫がハリマの森に参拝する所を襲って滅ぼそうと画策した。
レール、マークは千草姫を襲撃するが果たせず、捕縛されて牢獄に投げ込まれてしまった。牢獄で二人は、照国別、照公と出会う。
レール、マーク、照国別、照公の4人は、今の時勢を歌に歌って牢獄の時を過ごす。
と、そこへ一人の牢番がやってくる。実はその牢番は照国別の弟子、春公であった。春公は葵の沼で(第40巻第19章参照)師一行からはぐれた後、トルマン城下にやってきて、看守に身を変えて様子を探っていたところであった。
春公のおかげで、千草姫の通達も効をなさず、照国別たちは無事に過ごせることとなっていたのであった。 |
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03 | 18 | 鳳恋 | 〔1785〕 | 千草姫は、王がなかなかジャンクの追放に踏み切れないでいるのを責めている。その場へジャンク本人がやってきて、国難を救った照国別たちを投獄した千草姫の処置を非難し、釈放するように上奏する。
千草姫はジャンクをたしなめるが、逆に矛盾だらけの言動をジャンクに指摘されてしまう。千草姫は「生命を取る」「地獄に落とす」とジャンクを脅すが、ジャンクはものともしない。
ジャンクは、人民が一致団結して、王妃の改心がなければクーデターを起こすつもりであることを告げ、逆に王妃に改心を促して去っていく。
千草姫はこれに怒り、ウラル彦命の神力でジャンクの命を取ろうと、ハリマの森に参拝し、わけのわからない儀式を行う。
その帰り道、千草姫の行列を横切ろうとした若者が、番僧に捕縛された。千草姫は輿の中からその若者を見たところ、たいへんな美男子であった。たちまち千草姫は恋慕の情にとらわれた。
千草姫は、その若者を自ら尋問するという名目で、城の中に連れ込む。 |
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03 | 19 | 梅花団 | 〔1786〕 | 千草姫は王に、キューバーはもう死亡し、その代わりに第一天国の天人の霊を宿した若者がトルマン国の政治をつかさどるべく天より使わされた、と勝手に王に宣言する。
その若者(梅公)は、千草姫と話を合わせ、王や番僧たちに千草姫の話を信じ込ませてしまう。
千草姫は梅公を、自分の伴侶、高宮彦と思い違いをしていたのだた、梅公は話を合わせて千草姫に信じ込ませてしまう。
そうしておいて梅公は、囚人の恩赦を行い、まずは人気取りの政治を行って民衆の気を引くべきだと千草姫に勧める。
千草姫が囚人恩赦の命を王に伝えて部屋に戻ってくると、高宮彦(に化けた梅公)は寝ている。千草姫がゆり起こすと、梅公は、千草姫が高姫の再来、金毛九尾の狐であること、また自分の素性は、三五教の守護神・言霊別のエンゼルであることを明かし、大きな光となって窓の隙間より出で消えてしまった。
後に千草姫は驚きのあまり失神してしまう。 |
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03 | 20 | 千代の声 | 〔1787〕 | 太子は、レール、マークが千草姫襲撃に失敗して捕らわれたことを知り、自ら彼らを助けに行こうとするが、妹の王女に止められる。
そこへ、マーク、レールの妻が、マークとレールが入獄したと聞いて、離縁状を届けにやってくる。
妻たちが去っていくと、入れ違いに、釈放されたマークとレール、そして照国別、照公が帰ってくる。
一同は、いよいよ教政改革の時がきたと判断し、新内局組織の協議会を開いた。 |
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03 | 21 | 三婚 | 〔1788〕 | その協議会の中で、レールが新しい左守となり、テイラと夫婦になる、マークが新右守となってハリスと夫婦となることが定められた。また、王女は照国別の弟子・春公と夫婦となることとなった。
また太子は、タラハン国スダルマン太子の妹バンナ姫が許婚であった。
照国別と照公は婚礼の祝歌を歌う。そこへ番僧テルマンもやってきて、改革派の一同全員がそろう。 |
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03 | 22 | 優秀美 | 〔1789〕 | 教務総監ジャンクは、千草姫の行動や、太子、王女らが行方不明であることに心を悩めていた。そして、いつのまにかうつらうつらと眠りについてしまった。
すると、夢うつつの中、言霊別のエンゼルが現れて託宣を下す。
太子らは、ある場所に神の守護によりかくまわれており、いよいよ教政改革断行の時期がせまったので、すぐに会うことができる。
新しい左守・右守はすでに定めれており、ジャンクは教務総監として新体制を補佐するべし。また、王女の夫はすでに定められており、王女夫婦はハリマの森の神主として奉仕させるべし。
ガーデン王は八岐大蛇の悪霊の片割れに表意されているが、静かな地で静養すればよくなるであろう。
また、千草姫は実はすでにこの世を去っており、その遺骸に高姫の霊が憑依して、今の醜態・乱暴を立ち働いている。これは、金毛九尾の悪孤の霊の仕業であり、よくよく注意すべし。
そして、言霊別は去っていった。
ジャンクはこの託宣に勇気をつけられ、神恩を感謝する歌を歌っている。
そこへ、太子が改革派一行を引き連れて戻ってくる。太子とジャンクは新しい時代の到来を互いに喜び合う。
そして、照国別の案により、妖僧キューバーを解放し、また千草姫の審神をすべく、一同は姫の居間に向かう。
そこでは、今しも千草姫がテイラの母モクレンを、スコブツエン宗の残酷な掟にしたがって、神のいけにえにしようとしているところであった。
照国別は、外から力の限りドアを打ち破り、千草姫をウーンと一声、睨みつければ、金毛九尾の狐は慌てて天窓を伝い、どこともなく姿を隠してしまった。
ここにチウイン太子は新教王となり、トルマン国も小天国を現出するにいたった。 |
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- | - | - | 附 記念撮影 | - | 本文 | ||
- | - | - | 余白歌 | - | 本文 |