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霊界物語あらすじ

説明を読む
ここに掲載している霊界物語のあらすじは、東京の望月氏が作成したものです。
まだ作成されていない巻もあります(55~66巻のあたり)
第22巻 如意宝珠 酉の巻 を表示しています。
篇題 章題 〔通し章〕 あらすじ 本文
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過去・現在・未来を通じ宇宙精神の片鱗を漏らした霊界物語も二十二巻に達した。本巻は中でも執着心を戒めたものである。
なるべく誤りないように焦慮して口述したものの、凡夫の身をもって広大無辺の宇宙の意思を述べるので、口述者が霊界に至ったとき、神々から天下に誤謬を伝えたとお目玉を頂戴することの恐ろしさに沈みながら、やむを得ず口述したものである。
霊界に行ったときに大神様に平身低頭の覚悟を持って、舎身的に何神様かに口を貸して使ってもらっているばかりであるから、各階級の神々が思い思いの物語をして、当世の智者学者を失笑せしめ、軽侮の念を抱かせることもあるかもしれません。
善言美辞が脱線しました。皆様ご用心あれ。
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天下万物の中で、もっとも身魂が優れている存在である人間は、天から上中下三段の御魂を授けられて各自の御魂相応に世界経綸の神業を負わせているのである。
しかし今の世は身魂の位置が転倒していて、悪霊などが人類の霊魂を狂惑している。そのために地上は霊主体従・弱肉強食の暗黒世界となってしまっている。
天下経綸の神業に奉仕すべき人類の御魂が抜けてしまい獣の心になってしまっていては、世界は行き詰まり、急変事が突発しないとも限らない。
世界の人類は一日も早く目を覚まし、誠一つの麻柱の道によって霊魂を磨き、神心に立ち返られなければならない。
真心とは、天地の先祖の大神の大精神に合致した清浄心である。至仁至愛にして万事に心を配り、泰然として動かず焦らず、物質欲に淡く心神を安静に保ち、天意を本として人と争わずよく耐え忍ぶ。
宇宙一切を我が身魂の所有となして春夏秋冬、昼夜風雨雷電霜雪、いずれも言霊の御稜威に服従するまでに至るならば、初めて神心を発揚したと言えるのである。
災難や艱難苦難に会っても意に介せず、幸運に会っても油断せず、生死を一如と見、世事一切を神明の御心に任せる。
心魂常に安静にして小さな我を捨てて大我に合し、天の時・神意に従って天下公共のために舎身の活躍をなす。
善を思い善を言い善を行い、奇魂の真智を照らして大人の行いを備える。意思を常に内に向かわせて、自己独り知ることを慎み、力量才覚を人にひけらかすことを望まない。
神明の代表者たる品位を保ち、自然にして世界を光輝かし、一点の私心もなき時は、その胸中に永遠無窮の神国がある。
善者・老者を友として悪人愚者劣者を憐れみ、精神上・物質上に恵み救い、富貴をうらやまず貧賤をいとわず、富貴に処しては神国のために心魂を傾け、貧に処しては簡易なる生活に感謝する。
我心我欲を戒めて他を害せず傷つけず、失敗しても自暴自棄とならず、天命を楽しみ人としての天職を尽くし自己の生業に励む。
天下修斎の大神業に参加するときも頭脳を冷静にして騒がず、心魂洋々として不動にして寛仁大度の精神を養い、神政成就を補佐する。
神界の律法に照らして善悪を判断し、天意にしたがって一々最善の行動を取り、至仁至愛の真心を持って万有を守る。公平な精神を持つ人格を備える。
これらが備わったとき、すなわち神人にしての心魂は真心なのである。
逆に利害得失のために精神を左右して、体主霊従・利己主義を標榜するのは小人の魔心なのである。
魔心の帰結として、執着心強くして自ら地獄道を造り邪気を生み出し、自ら苦しむ者が天下に充満する。この阿鼻叫喚の惨状を座視するに忍びず、大神は苦集滅道を説き道法礼節を開示し給うたのである。それがこの物語である。
非は理に勝たず、理は法に勝たず、法は権に勝たず、権は天に勝たず。天定まって人を制するという真諦を神のまにまに二十二巻まで口述し終わった次第である。
いよいよ大正十年九月八日に神命が降り十日間の斎戒沐浴を終わって、同十八日より口述を始め、大正十一年旧三月三日までに五百六十七章を、続いて五月五日までに王仁に因んだ七百十二章を述べ終わった。神界経綸の少しも違算のないことに驚くばかりである。
瑞月が本書を口述始めるや、パリサイ人の非難攻撃現れ、編集者以下筆録者もずいぶん苦しんだが、神助のもとにかろうじて本巻まで口述筆記を終わり、神竜の片鱗をここに開示することができたことを、大教祖の神霊に謹んで感謝し奉る。
また筆録者一同、関係者一同にここに謹んで感謝する次第である。
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01 01 〔693〕
天地の元津御親である国治立大神は、醜の曲津の猛びによってぜひ無く豊国姫命とともに独身神となって御身を隠したもうた。
大国治立尊の御子である神伊弉諾大神、神伊弉冊大神の二柱は、神勅を奉じて海月なす漂へる国を造り固めようとした。木花姫命や日の出神とはかって神国成就のために尽くしたのだが、天足彦・胞場姫の霊から現れ出た曲津見が荒れ狂い、八百万の神人たちの心は再びねじけて、世は常闇となってしまった。
神伊弉諾命の御子と生まれた天照大御神と神素盞嗚大神は、天津神・国津神たちに道を説き諭したが、日に世に穢れが積もって多くの罪が出で来た。
素盞嗚大神は葦原国を治めるべく心を砕いたが、治めるすべもなく泣き叫んだ。神伊弉諾命はこれを見咎めて、葦原国を治める資格がないので母の治める地下の国へ行くように、と申し渡した。
素盞嗚尊は姉神・天照大御神に事と次第を申し上げようと高天原に上ったが、天照大御神は素盞嗚尊が高天原を奪いに来たのではないか、と真意を疑った。
素盞嗚尊の疑いは、誓約によって晴れたが、素盞嗚尊の従神たちが怒って暴れたために、素盞嗚尊は千座の置戸を背負って高天原を追われ、地上の国々にはびこる邪神たちを言向け和す漂浪の旅を続けることとなった。
大洪水以前はエルサレムが神業の中心地であった。その後、国治立尊の分霊・国武彦が自転倒島に現れて、神素盞嗚大神と共に五六七神政の基礎を築いた。それより自転倒島は世界統一の神業地と定まった。
顕国玉の精より現れた如意宝珠の玉、黄金の玉、紫の玉は神界における三種の神宝として最も貴重なものとされている。この三つの玉を称して瑞の御魂という。この玉が納まる国は、豊葦原の瑞穂国を統一すべき神憲が備わっているのである。
国治立命は天教山を出入り口となし、豊国姫神は鳴門を出入り口として、地上の経綸を行い、長く世に隠れて五六七神政成就の時機を待った。
素盞嗚尊は分霊・少彦名命として神業に参加していたが、今また言依別命と現れて三種の神宝を保護することとなった。
三種の神宝は錦の宮に納まったが、国治立命・豊国姫神の命によって、いまだ時期尚早なれば三千世界一度に開く梅の花の春を待って三個の神宝を世に表すべし、とあったため、言依別命はひそかに自転倒島のある地点に深く隠した。
本巻はその神業の由来を口述する。有形にして無形、有声にして無声なる神変不可思議の神宝なので、凡眼では見ることができないものである。
黒姫は、言依別命から黄金の玉を守る役目を与えられていた。黒姫は黄金の玉を四尾山の麓の一つ松の下に埋めて隠し、ときどき密かにその無事を確認にやってきていた。
ある晩、黒姫がしばしばこそこそとどこかへ出かけていくのを不審に思ったテーリスタンとカーリンスは、黒姫のあとをつけて四尾山の麓までやってきた。
すると黒姫は、一つ松の下から石びつを掘り出して、その蓋を開けて中をのぞいていた。しかし黒姫は中が空っぽであることに驚いてどっと打ち倒れてしまった。黒姫は人の足音を聞きつけて気を取り直し、木陰に姿を隠した。
テーリスタンとカーリンスは、黒姫が去った後に一つ松の下に来て、石びつを確認し、言依別命が黒姫に託した黄金の玉は、ここに隠されてあったことを悟った。しかし先ほど見た黒姫の様子が変だったので、二人は黒姫の姿を辺りに探す。
すると下手のため池に人が飛び込んだ音がした。二人は駆けつけると、池の縁に履物が脱ぎ捨ててあるのが見えた。黒姫が身投げしたことを悟り、カーリンスは池に飛び込んで黒姫を救出した。
カーリンスは、二人分の着物を取りに行き、その間にテーリスタンが火を起こして黒姫の体を温めた。そのうちに黒姫は気が付くが、死なしてくれ、と言ってテーリスタンとカーリンスを困らせる。
テーリスタンは、黒姫が黄金の玉を紛失したのだろう、と推測する。黒姫は図星を指されて、自分を助けてくれたテーリスタンとカーリンスが、てっきり玉を盗んだものと疑い始め、二人を厳しく詰問しだした。
テーリスタンとカーリンスは、親切心が仇となってあらぬ疑いをかけられたことに困惑している。
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01 02 〔694〕
黒姫は二人を自分の館に連れて帰った。テーリスタンとカーリンスが黄金の玉を盗んだと疑ってきかない黒姫は、二人に滔々と心を入れ替えて玉を差し出すようにと説教をしている。
テーリスタンとカーリンスは自分たちではないと抗弁するが、黒姫は一向に信用しない。そのうちに、テーリスタンとカーリンスが、お互いに相棒が玉を盗んだのではないかと疑い出して、喧嘩を始めた。
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01 03 〔695〕
黒姫は今度は、テーリスタンとカーリンスの主人だった鷹依姫に疑いをかける。朝参の後に竜国別の家に立ち寄り、鷹依姫に対して、テーリスタンとカーリンスに盗み出させた黄金の玉を返せ、と詰め寄る。
鷹依姫は必死に抗弁するが、黒姫はあくまで鷹依姫を疑って聞かない。鷹依姫は居丈高に尋問する黒姫の態度に、腹立たしくなり泣いている。そこへ竜国別が帰ってきた。
そこへテーリスタンとカーリンスが入ってきた。カーリンスは竜国別らに、黒姫が黄金の玉を紛失し、自分たちが池に身投げした黒姫を助けたのがあべこべに、玉盗人の疑いをかけられてしまっている顛末を語った。
竜国別は黄金の玉が紛失したこと、黒姫がその疑いをテーリスタン、カーリンス、鷹依姫にかけていることを知ると、ご神前にお伺いを立てに行った。戻ってきた竜国別は、「時節を待て」という神示があったことを告げた。
黒姫はあくまで鷹依姫を疑い、憎まれ口を叩いた後、懐剣を抜いて自害しようとする。するとテーリスタンとカーリンスは突然、玉を盗んだのは自分たち二人であり、玉はすでにバラモン教の蜈蚣姫に渡したのだ、と狂言を始めた。
黒姫、鷹依姫、竜国別は、てっきり真犯人が自白したと思い、二人を相手に大喧嘩を始める。そこへ言依別命が館の前を通りかかり、騒ぎを聞きつけた。
言依別命が訳を尋ねると、黒姫はテーリスタンとカーリンスが黄金の玉を盗んだことを白状したのだ、と説明した。
言依別命はテーリスタンとカーリンスが、黒姫の疑いが鷹依姫や竜国別に飛び火するのを防ぐために、自ら濡れ衣を着たことを悟って二人を褒めた。
言依別命は一同に対して、玉が紛失した責任はすべて自分が負うので、もうこれ限りこのことは水に流してくれ、と言ってその場を祓い清めた。黒姫は言依別命が玉の紛失を追及しないので肝を抜かれて唖然としている。
この後、黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスの五人は、神界の仕組の糸に操られて、黄金の玉探索という名目で四方の国々を訪ね、悪魔退治の旅を行うことになるのであった。
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01 04 〔696〕
黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスの五人は、言依別命にしたがって錦の宮に参拝して帰る途上、高姫、紫姫、若彦に出くわした。
高姫は、自分が参拝する間に、五人に自宅に来るようにと言い渡して行ってしまった。黒姫、テーリスタン、カーリンスはてっきり黄金の玉紛失の件がすでに高姫の耳に入ったのではないかと恐れている。
果たして、戻ってきた高姫は黄金の玉紛失の責任を一同に対して問い始める。そして無関係の紫姫と若彦に対しても当たりだした。
高姫に覚悟を問われた黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスの五人は、世界中を探し回ってでも黄金の玉を見つけ出す決意を表した。そしてそのまま高姫宅を出ると、錦の宮を拝して旅装を整え、黄金の玉探索の旅に出立して行った。
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02 05 〔697〕
三つの玉が揃って一時は活気が出た聖地も、五人が黄金の玉紛失の責を取って探索に出かけたことが神人の間に喧伝されると、物寂しい感じが聖地の空に漂った。
三五教の幹部も信徒もこの話題でもちきりであったが、高姫がこのことについて演説会を開くという。三五教徒たちは高姫が何を言い出すのかと先を争って演説会につめかけた。
高姫は壇上で前口上を述べた後、黄金の玉紛失という一大事の際に誰も高姫のところにこの件で相談に来た者がないことを憤慨し、聴衆に八つ当たりをした。
国依別は壇上に上がり、逆に高姫が五人を追放同然にして玉探索の旅に立たせたことを詰問した。高姫は追い出したのではなく、理屈を説いて聞かせた結果、五人が自発的に探索の旅に出ることになったのだ、と反論する。
聴衆の中から、しきりに高姫を野次り、国依別の方を持つ者がいる。高姫は怒って怒鳴りつけるが、満座の聴衆は手を打って笑いさざめく。高姫は、自分の言が気に入らない者はすべて退場しろ、と言い渡す。
それに対してまた聴衆の中から高姫に対して野次が飛び、場内は騒然となった。そこへ言依別命は若彦、紫姫、玉治別を連れて壇上に現れた。聴衆は拍手で迎え、散りつつあった者たちも席に戻ってきた。
言依別命は悠然として何事があったかを問いかけると、聴衆の中から、黄金の玉紛失事件について高姫の論がまったく要領を得ないと、不服の申し立てがあった。言依別命は、何事も神様の御経綸であってこの件も心配するに及ばない、と答えた。
高姫は言依別命の態度がこの一大事に対して軟弱だと責め立てる。言依別命は、自転倒島の中心点に玉照彦・玉照姫の神人が守る三五教に心配はない、あまり黒姫を責めると高姫自身が玉を探しに行かなければならなくなる、と忠告する。
絶対にそんなことはない、という高姫に対して、言依別命は、人心が不安になっているから如意宝珠の玉を今皆に拝ませてもらいたい、と要求する。
高姫は売り言葉に買い言葉で、自分は厳重に秘密を守って保管していたと自信満々で、八尋殿の畳をめくって下から桐の箱を取り出した。そして得意顔に蓋を開けたが、中を見てさっと顔色が変わった。
国依別が中を見ると、ただ石が入っているのみであった。高姫は、一同の身魂が悪いので玉が石に見えるのだ、と強弁するが、聴衆から野次の嵐を受ける。
言依別命は、これも神界の都合だろうが、責任はすべて自分が取ると言ってその場をなだめた。一同は教主の言葉に免じてその場を退散した。高姫は石の入った箱を抱えて寒風の中、夜叉のような顔をして自宅に走って帰り行く。
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02 06 〔698〕
高姫は自宅に帰ると発熱して寝込んでしまった。遠州と武州が看病に立ち働いている。そこへ玉治別夫婦が見舞いにやってきた。
玉治別とお勝が病床に来ると、高姫は自分は病気なんかじゃない、演説会で癇癪玉が詰めて熱が出ただけだ、と強がりを言う。
高姫は玉治別に、この件でどんな噂が立っているか聞いた。玉治別は、いろんな意見があってまとまっていないが、高姫に責任があるから聖地を出て玉探索にでるべきだ、という者もいることを伝えた。
高姫は日の出神の生き宮である自分は絶対に聖地を離れない、と言う。玉治別は、玉を現に紛失した責任を高姫自身はどう考えているか、と問いかけた。
高姫は青二才が心配することではない、と返して言依別命や杢助、お初にも八つ当たりをはじめた。玉治別は抗議するが、高姫は自分は生き宮だと権威を嵩にかけ、逆上して吠え立てる。
玉治別はなだめようとするが、高姫は荒れ狂って人に責任をなすりつけようとするのみである。玉治別は仕方なくお勝の手を取って高姫の館から逃げ出した。すると、見舞いにやってきた杢助・お初と門のところでばったり出くわした。
玉治別は杢助に、高姫が杢助・お初にも当り散らしていると忠告すると、帰って行った。
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02 07 〔699〕
高姫は精神錯乱状態になって、その咆哮は館の外にまでびりびりと響いてきた。遠州と武州はうろたえてしまっている。
そこへ杢助がやってきた。杢助とお初は高姫の床に来ると、天の数歌を唱えて鎮魂した。荒れ狂っていた高姫は鎮静し、ばたりと床の上に倒れて唸っている。
杢助は高姫に心配しないようにと声をかけるが、高姫はやにわに杢助の胸倉をつかんで、杢助とお初が如意宝珠の玉を吐き出させたからこうなったのだ、と八つ当たりをはじめた。
杢助は強力に任せて高姫を引き剥がした。お初は高姫に、有形の玉三個を失くした代わりに、もっと立派な無形の玉をみなそれぞれ神様からいただいたのだ、と高姫を諭す。
しかし高姫は、お初に飛びかかろうとする。お初は身軽に高姫をかわしている。そこへテルヂーと雲州が高姫の見舞いにやってきた。遠州が出迎えて、高姫の病気が昂じて危険な状態になっているから、今は帰った方がよい、と忠告する。しかしテルヂーと雲州は忠告を聞かずに中へ入っていく。
中では高姫がお初に飛び掛りお初がよける、というのを繰り返している。杢助は煙草を吸いながらそれを悠々と見物している。高姫はテルヂーと雲州の姿を見るや否や、二人が玉を盗んだのだろうと飛び掛って玉を吐かせようとする。
杢助は強力を発揮して高姫を引き剥がし、蒲団の上につまみ降ろした。高姫はうわごとを言い始めた。
そのうわごとは、素盞嗚尊の立派な身魂に感心して三五教へ来てみたが、ハイカラ教主の言依別命に愛想をつかしたので、自分が三つの玉を飲み込んでふたたびウラナイ教を立てようと考えていたのに、黒姫は玉を邪神に取られ、自分の如意宝珠も取られてしまった、と自分の心のうちを白状するものであった。
一同は高姫が恐ろしい考えでいたことを知り、肝をつぶしている。そのうちに高姫の館の門前には、見舞い客がごった返してきた。杢助は高姫のうわごとが漏れては大変なことになると、面会謝絶にしてしまった。
しかし国依別は遠州が止めるのも聞かずに奥に入ってきた。高姫は杢助に介抱されて寝ていた。杢助は、高姫は取りとめのないことを口走り精神錯乱に陥っているから、もう駄目かもしれない、と悲観する。
お初はにっこり笑って、これには深い仔細があることでしょう、と一同を元気付ける。言依別命は教団の幹部を連れて枕頭に訪れ、天津祝詞と天の数歌を歌って回復を祈った。
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02 08 〔700〕
高姫は荒野原に居た。頭の取れた地蔵が左手に玉を載せている。その玉を如意宝珠だと思って、高姫は地蔵の手から玉を取ろうともがいていた。
すると地蔵の後ろから、黒姫、鷹依姫、竜国別、テーリスタン、カーリンスが現れた。高姫は黒姫に、黄金の玉探索の首尾を尋ねる。黒姫は、自分たちは身を投げて死んだのだが、高姫を取り殺してこの地獄に連れて来たのだ、という。
高姫が自分の頭を探ると、三角形の紙帽子が被せられていた。どうやら自分が死んだらしいと悟ると、高姫は逆上して五人を怒鳴りつけた。
しかし五人は数を頼りに高姫に掴みかかり、高姫は追い詰められてしまう。荒野原を逃げていくと、大川に突き当たった。高姫は濁流に飛び込んで向こう岸に渡ると、ぬれた着物を抱えて薄の原を傷だらけになりながら逃げて行った。
五人はなおも追いかけてくる。高姫は薄の中に隠れている。見ると五人は鉄棒を引っさげた鬼の姿になって高姫を探している。
鬼は高姫は先に行ってしまったと思って駆け出すが、一人の赤鬼だけが、ここでもう少し高姫を探すと言って残った。赤鬼は黒姫であった。
赤鬼となった黒姫は、高姫を助けようとの心で、他の鬼が行ってしまったのを幸い残って高姫を探していたのであった。赤鬼の黒姫は、高姫を背負って幽界の安全地帯に運んでいった。
しかし山をいくつも越えていった先に、玉草の生えた池のほとりに着くと、赤鬼はにわかに高姫を降ろすと、池の中に飛び込んでしまった。高姫は不審に思って、赤鬼が残した鉄棒を手に取ると、それは張子の棒であった。
しかし鉄棒を持つやいなや、高姫は黒鬼と化してしまった。池の中から黒姫が元の姿で現れて、鉄棒は執着を表しているから、捨ててしまうようにと高姫の黒鬼に呼びかけた。
黒姫は、執着を捨てて池に飛び込んだところ、池の中に立派な女神が現れて元の姿に戻ることができたのだ、と高姫に忠告した。
そこへ残りの四人の鬼がやってきて、高姫の黒鬼に襲いかかろうとする。高姫は鉄棒で応戦しようとするが、黒姫の忠告の声ににわかに我に返り、鉄棒を投げ捨てて池に飛び込んだ。他の四人の鬼たちもそれにならった。
水底に麗しい女神が現れて、一同に対して、まだ幽界に来るべき者ではない、執着心の悪魔に引きずられてこんなところまで来たのだから、一刻も早く立ち返れ、と諭した。そして女神は、小和田姫命またの名を地蔵菩薩だと名乗った。
高姫はたちまち麗しい原野に花に囲まれているかと思うと、気が付けば杢助に介抱されながら、言依別命らが天の数歌を歌うのを聞いていた。これ以降高姫の病気は拭うがごとく消えてしまった。
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03 09 〔701〕
高姫は相変わらず玉を取ったのは曲津神の仕業だと思い込んでいた。そして夜に出立すると、鷹鳥山に小さな庵を結んで二三の供人と共に潜んで時を待っていた。
高姫は鷹鳥山の庵で三五教を楯に教えを説いていたが、それを聞きに近隣の老若男女が集まってきて、栄えていた。
バラモン教のカナンボールとスマートボールは、鷹鳥山に現れて鷹鳥姫と名乗るこの婆が、如意宝珠の玉と紫の玉を飲み込んでいると噂に聞いた。そこで二人は、蜈蚣姫に献上するために鷹鳥姫を襲って玉を奪おうと画策した。
二人は鷹鳥姫の侍女・玉能姫が清泉に水を汲みに来るところを狙うが、逆に白狐につままれて気絶してしまう。スマートとカナンは気が付くが、お互いを化け物と勘違いして喧嘩を始め、清泉に落ちてしまう。泉は真っ黒になってしまった。
スマートとカナンの首尾を確かめに来た部下たちは、清泉に人が落ちた音を聞いて、てっきり玉能姫と思い込み、蜈蚣姫のところへ連れて行こうとして泉にやってきた。泉ではスマートとカナンが取っ組み合いの喧嘩をしている。
薄暗がりの中、バラモン教の部下の金助、銀公、鉄はスマートとカナンを水に落ちた玉能姫ら鷹鳥山の侍女だと思って助けようと、水に飛びこんだ。しかしスマートとカナンの喧嘩に巻き込まれてますます混乱してしまう。
そこへ先ほどの三人の女神が現れて、金助、銀公、鉄を恩人だと言って真っ白な肌に変えてしまった。また美しい着物を着せられて三人は喜び、女神たちと手を取って踊っている。
スマートとカナンはそれを羨ましそうに眺めている。また残りの二人のバラモン教の部下、熊と蜂も三人を呼び止めるが、金、銀、鉄の三人は、鷹鳥姫のお目にかかってくる、と言い残して、女神たちと山を登って行ってしまった。
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03 10 〔702〕
三人の女は上枝姫、中枝姫、下枝姫と言った。金助は上枝姫と夫婦気取りで話しかけたが、あたりの様子が鷹鳥山と少し違うことに気がついた。上枝姫は、鷹鳥山からすでに三百里離れたところに来たのだ、と答えた。
上枝姫は、自分とここに楽しく暮らすことができたのも、金助が泉に落ちた玉能姫を助け出そうとした一心が凝ったのだ、と答えた。しかしその後、玉能姫に恩を着せて蜈蚣姫のところに連れて行き、手柄を立てようとしたことを指摘した。
上枝姫によると、玉能姫を救おうという金助の好意が造った世界は短くして終わりを告げ、その後には修羅道が展開するのだ、という。そう言い残して上枝姫は消えてしまった。
金助は暗夜の道を前後左右に狂いまわると、たちまち千尋の谷に落ち込んでしまった。谷底の川に落ち込んだ金助は、鬼婆に救われた。鬼婆は、自分は金助の玉能姫への執着が生み出した存在だから、自分の夫になるようにと言い渡した。
鬼婆は蠑螈姫と名乗り、金助の色欲と金銭欲が凝って出現した存在だと明かした。蠑螈姫は金助に夫になるように迫る。そのおぞましさに金助ははっと気が付けば、泉に飛び込んだ拍子に気絶していたことに気が付いた。
ようやく夜が明けると、スマートボール、カナンボールと五人のバラモン教の部下たちは、あちこちの叢の中に傷だらけになって苦悶していた。
本文
03 11 〔703〕
金助は傷を負って苦しんでいる一同を眺めながら、バラモン教のためと思ってやったことがこのような結果になってしまったことを思った。そして、自分の肉体を損壊することの非を悟り、バラモン教が邪教であることを知った。
金助はここは三五教の地だから、三五教の神様のご教訓をいただいたことを悟り、大神様に懺悔をして許しを請うた。他の一同も気が付いて金助の周りに集まってきたが、金助はにわかに神懸り、威厳のある容貌となった。
他の連中は金助の気がおかしくなったと思って気をつかせようとするが、金助は妙音菩薩の教えを垂れると、美しい雲に包まれて山上に上っていった。他の六人は金助を追って鷹鳥山の頂上に来ると、金助は黄金の像になって座っていた。
六人は黄金に目がくらんで像を持って返ろうとするが、金助は仏法で六人に説いて聞かせる。六人は金の像を持って返ろうと金助に武者振りつくが、たちまちふるい落とされてしまった。
金助の像は立ち上がって両眼から日月の光明を放射した。鷹鳥山は暗夜でも数十里先からその光を認めることができるようになった。
本文
03 12 〔704〕
鷹鳥山中腹には、高姫、若彦、玉能姫の三人が籠もっていた。三人は谷川に降り立って禊を修していると、中空から二十四五の男が落ちてきて滝壺に落ち込んだ。
若彦は男を救いあげた。天の数歌を唱えて魂呼びをすると、男は息を吹き返した。男は三五教に助けられたことを知ると、銀とだけ名乗った。玉能姫に素性を尋ねられて、銀公は自分は無住所如来だ、と出任せを言う。
しかし玉能姫は、以前にバラモン教徒に襲われそうになったことがあり、銀公の顔を覚えていた。若彦も銀公の顔を認め、三五教の言霊で清めてやろう、という。
三五教の言霊に恐れをなした銀公は、金助が黄金仏像になった一件を明かした。若彦が外に出て山頂を見ると、確かに光が煌煌と輝いている。若彦は驚いて鷹鳥姫を呼んだ。
若彦を留守に残して、鷹鳥姫と玉能姫は山頂に向かった。金の仏像は二人を見ると、鷹鳥姫を掴んで、自分のところに来るにはまだ早い、と言って山の中腹に投げ返した。
仏像は玉能姫は東に行け、と言って東の方向に投げてしまった。すると仏像はたちまち爆音とともに消えてしまった。後には肉体に戻った金助が、山を降って鷹鳥姫の庵を尋ね、銀公と共に三五教に帰順した。
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04 00 - 本文
04 13 〔705〕
蜈蚣姫の部下と仕えて悪を行っていた金助も、娑婆即寂光浄土の真諦を悟ると、たちまち黄金の肌となって弥勒の霊体を現し、鷹鳥山の山頂から四方を照らした。
黄金仏を確かめに来た鷹鳥姫は、元の山腹の庵に投げ返された。一方玉能姫は、生田の森に投げ返された。
若彦が金・銀の両人に教えを説いていると、突然二人は人事不省に陥ってしまった。若彦はあわてて二人を蘇生させようとするが、突然鷹鳥姫が中空から落ちてきたため、狼狽してしまう。
その間にも、バラモン教のスマートボールらが竹槍をかざしながら庵を取り囲んだ。信徒たちはこの有様に驚いて散り散りになってしまった。
若彦はこの惨状の中に、一視同仁の心を思い起こし、神様に懺悔を捧げて自分の慢心の罪のお詫びを始めた。若彦は心中開き、梅香の匂うごとき境地となった。スマートボールたちは今が機会と攻め寄せてくるが、若彦はその場に端座して、感謝の祈りを捧げるばかりであった。
バラモン教徒が槍で突きかかろうとしたその刹那、中空から火弾が落下して爆発し、四面白煙に包まれ、白狐の声が当たりに響いた。鷹鳥姫、金・銀の三人ははっと目を覚ました。
中空に女神の声が響き、鷹鳥姫の執着がいまだ去らないために、我を通して自ら地獄を生み出して自らが苦しむ、その憐れさを去り、一刻も早く本心に立ち返れ、と諭した。
鷹鳥姫は夢が覚めたごとく心に肯き、神界のため天下万民のためとして行ってきたことは、自分の心のおごりであったことに気づいた。鷹鳥姫は一心不乱に感謝の涙に咽びながら、天地の神霊に祈願を籠めた。
白煙が晴れると、そこは鷹鳥山の庵の庭園であった。上枝姫、中枝姫、下枝姫の三人が現れて、鷹鳥姫、若彦、金助、銀公を幣で払うと、庵の中に導いた。スマートボールらは身体強直したままこの様子を眺めている。
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04 14 〔706〕
時置師神の再来である杢助は、高姫、若彦の改心の経緯を宣伝歌に歌い、またスマートボールらバラモン教徒に改心を促す宣伝歌を歌いながら、初稚姫と玉能姫を連れてこの場に現れた。
鷹鳥姫、若彦、金助、銀公の四人は嬉し涙に咽びながら杢助の前に首を垂れた。鷹鳥姫や若彦は、杢助に感謝の辞を述べる。
初稚姫は杢助の背から下ろされると神懸り状態となり、一同に教えを諭した。八岐大蛇を言向け和してミロク神政の神業に参加しようと思ったら、まず自分の心の娑婆世界を天国浄土となす必要がある、と説いた。
初稚姫は教えを続けた。この世界は心によって天国ともなり、また地獄ともなる。完全無欠の神国に生を享けながら、これを娑婆世界と観じ暗黒無明の世界と観ずるのは、自らの心が暗いからである、と。
鷹鳥姫と若彦は感謝の涙に身を震わせていた。杢助、初稚姫、玉能姫、スマートボール以下の人々も、いつしか消えてしまっていた。
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04 15 〔707〕
鷹鳥姫と若彦は、この不思議を語り合っている。若彦と金・銀の三人は、とりもなおさず杢助にお礼を言いにいくことになって出立した。
三人が山麓の道にさしかかると、昼寝をしていた数十人の男たちに見咎められた。これはスマートボールらバラモン教徒の手勢だった。若彦は木の上に難をのがれ、金助と銀公はスマートボールに改心を促す。
スマートボールは怒って金・銀に襲い掛かるが、樹上から若彦が改心を促す宣伝歌を歌った。バラモン教徒たちは散り散りに逃げてしまった。
三人は生田の森の杢助の庵にたどり着いた。杢助は知らぬ態にて三人を迎える。若彦が玉能姫がここにいないか尋ねると、杢助は何事も神様に任せて執着を去れ、と若彦を諭す。
玉能姫は杢助親子に助けられてここにかくまわれていた。しかし杢助は女房を訪ねて教えの館を捨ててくる若彦の態度を、宣伝使として厳しく咎めたてた。また玉能姫は素盞嗚大神の御楯となって功名を表すまで夫に面会できないとのお示しを明かした。
若彦は杢助の言葉に胸を打たれ、伏し拝むと金・銀と共に去って行った。一方杢助は、神界の命とはいえ、若彦と玉能姫の間の生木を裂くような仕打ちをした苦しい胸の内をひとり明かして懺悔の涙に暮れている。
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04 16 〔708〕
玉能姫は、神業のために夫と一時別れて活動をしなければならないお役目を思い、宣伝への決意を一弦琴に託して歌っていた。
杢助がそこへやってきて、玉能姫に慰めの言葉をかける。初稚姫は神の道に安く艱難を乗り越える祈りを籠めた宣伝歌を歌った。
杢助の庵の外では、にわかに騒がしい声が聞こえてきた。耳を傾けると、若彦がバラモン教徒たちに捕らえられて、打ち据えられている。
玉能姫はいたたまれない気持ちになったが、自分と夫のそれぞれに与えられた役目に対するご神命を破るわけにもいかず、苦しい胸のうちをこらえて平静を装っている。
玉能姫杢助に促されて天津祝詞を静かに奏上した。すると不思議にも庵の窓の外の人影は消えてしまい、後にはただ白狐が森の彼方に進んで行くのが見えたのみであった。
玉能姫は自分の心の迷いを糺してくれたことに対して、神への感謝の祈りを捧げた。
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05 17 〔709〕
初稚姫と玉能姫は神の御告げによって、再度山の山頂に上っていった。その間、留守を守る杢助のところへ、国依別が訪ねて来た。
国依別は、杢助が太元教という一派を立てたと聞いて、そのことを詰問しにきたのであった。杢助は、三五教の支部を構えていたら三五教の信者がやって来てたかるので、愛想をつかして別派を立てたのだ、と四足の身魂を引き合いに出して、逆に国依別を諭しにかかった。
国依別は実は若彦が杢助の庵を訪ねた後から心機一転して無言の行を営んでいることから、その経緯を聞きだしに来たのであった。国依別は杢助が若彦を厳しく戒めたことを悟り、自戒の念を口にして杢助と笑いあった。
そこへ鷹鳥姫(高姫)がやってきた。杢助は、鷹鳥姫の相手を国依別に任せて自分は奥に引っ込んでしまう。鷹鳥姫はやはり、杢助が太元教を立てたと聞いて、戒めにやってきたのであった。
国依別は薄暗くなってきたのを幸い、杢助の振りをして鷹鳥姫に応対し、鷹鳥姫の失敗をあげつらってからかう。国依別は逆立ちして歩き、転んで鷹鳥姫の上にのしかかる。
そこへ本物の杢助が現れる。杢助は、鷹鳥姫が実は玉の探索に行き詰って杢助に知恵を借りにやってきたことを見透かしてしまう。
思案顔になる鷹鳥姫に対して、国依別は、実は自分が玉を発見しておいたのだと言ってからかう。鷹鳥姫は国依別の言葉を真に受けて、とうとう取っ組み合いの喧嘩を始める。
杢助が尋ねると、国依別は本当のことを明かし、鷹鳥姫はがっかりする。その様を見て杢助は大笑いする。
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05 18 〔710〕
初稚姫と玉能姫は、霊夢に感じて山頂に登り行きつつあった。二人は布引の滝のそばを通った際、禊をしてから山頂に行こうとして、滝の方に向かっていった。
するとそこにはバラモン教のスマートボール、カナンボールらの一味がいて、二人は囲まれてしまった。カナンボールは、三五教の聖地では多くの信徒が、玉を隠したのは玉能姫だと疑っているから、その玉をもってバラモン教に寝返るようにと玉能姫を脅す。
初稚姫はカナンボールの言葉を信じるな、と玉能姫に気をつける。バラモン教徒らは説得が通じないと見ると、二人を囲んで力ずくで二人を虜にしようとする。
玉能姫と初稚姫はスマートボールとカナンボールらの一味を取っては投げて奮戦し、みな谷底に落としてしまった。しかしそこへ蜈蚣姫が手下を引き連れてやってきた。蜈蚣姫は玉能姫を気絶させ、初稚姫も組み敷いて殺そうとする。
そこへ宣伝歌が聞こえてきた。滝公と谷丸が、言依別命の命によって救援に来たのであった。蜈蚣姫は谷丸によって谷底に落とされてしまい、蜈蚣姫以下バラモン教徒らはこそこそと四方へ逃げ散ってしまった。
初稚姫は神懸りになり、我々の任務は教主言依別から神界経綸に必要な玉をあずかり、ある地点に埋蔵することにあり、妨害しようと寄せ来る悪魔を追い払うためには、一時的に武術を使うも止むを得ない、と託宣した。
谷丸と滝公は二人を警護して山頂にたどり着くと、教主言依別命は、三個の神玉を安置して祈願を凝らしていた。
皆が到着すると、言依別命はにこやかに迎えた。玉能姫が布引の滝で危ない目にあって谷丸・滝公に助けられた事を話すと、言依別命は、霊夢に感じながらすぐさま山頂に登らず、禊をしようとわき道をしたので神様に戒められたのだ、と答えた。
言依別命は、如意宝珠の玉と紫の玉を、神島に埋蔵する役を、初稚姫と玉能姫に命じ、谷丸と滝公に、そのお供を言いつけた。谷丸には佐田彦、滝公には波留彦と名を与えた。
そして黄金の玉は自分がある霊山に隠しておく、と告げた。また神島へはこの宝玉が光を発する三十万年の未来になったら迎えに行くが、それまでは自分は決して渡らない、と答えた。
この黄金の玉は高熊山に隠されて、その印に三つ葉躑躅が植えられた。三個の宝玉が世に出でて輝く活動を、三つの御魂の出現というのである。
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05 19 〔711〕
佐田彦は玉を入れた箱をかつぎ、玉能姫はバラモン教徒の目をくらますために、気違いの真似をして駆けて行った。
バラモン教徒たちは途中で玉を奪おうと待ち構えていたが、玉能姫の演技に気づかずに見過ごしてしまった。一行は高砂の浜辺で漁師から舟を買うと、神島さして漕ぎ出した。
浜辺にいたときは暴風により海が荒れていたが、一行が漕ぎ出すと不思議にも暴風は止んでしまい、みるみる島に着いた。初稚姫と玉能姫が神島の山頂に着くと、五人の童子と三人の童女が現れて、黄金の鍬で固い岩石を掘ってしまった。
初稚姫は、童子・童女たちに向かって厳の大神様・瑞の大神様と呼びかけ、言依別命の命によって神玉を無事に持って来たことを伝えた。
童子と童女は玉箱を受け取ると、掘った穴の中に消えてしまった。二人が穴をのぞくと、二つの玉箱が微妙の音声と鮮光を放っていた。二人は童子・童女が残した黄金の鍬で穴を埋め、あたりの小松をその上に植えて祝詞を奏上し、山を下った。
佐田彦と波留彦は帰ってきた二人に、せめて埋めた後を拝ませて欲しいと願い出た。初稚姫と玉能姫は黙って首を横に振るだけだった。すると雷のような声が、すぐに立ち去れ、と佐田彦・波留彦を戒めた。
一行は神島を後にして去っていった。
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05 20 〔712〕
初稚姫と玉能姫は、佐田彦と波留彦を伴って、杢助の庵に戻ってきた。国依別と高姫は、教理を闘わせながら杢助の庵に逗留していた。
杢助から、四人が如意宝珠の玉と紫の玉の神業に携わったと聞いた高姫は、嬉しいような悲しいような顔をして眼をむき、俯いてしまった。国依別がそれをからかう。
高姫は言依別命に八つ当たりをして悪口を言う。佐田彦、波留彦は怒って高姫に抗議するが、高姫は軽口にごまかした。
言依別命は高熊山に神秘の経綸をなし、聖地に帰って神業に参じ、玉照彦命、玉照姫命の神示を海外にまで広め、八岐大蛇を征服に従事する多数の神人を教養した。
杢助は初稚姫と共に聖地で教主を助け、三五教の三柱と呼ばれるまでになった。玉能姫は生田の森に留まり、稚桜姫命の神霊を祀り、三五神政の魁を勤めた。
若彦は自転倒島全体を巡歴し、最後に神界の命によって玉能姫と共に神霊に奉仕することとなった。
国依別は、兄の真浦が波斯の国に赴いたため、宇都山郷の武志の宮に仕えて、松鷹彦に孝養を尽くした。
高姫は聖地に使えていたが、黒姫の後を追って海外に出て、真正の日の出神に出会い、自らの守護神の素性を悟り、悔改めて大車輪の活動を続けた。
佐田彦・波留彦は言依別命の側近く仕えた。
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