王仁DBβ版 出口王仁三郎と霊界物語の総合検索サイト 文献検索 画像検索 単語検索 メニュー開く
サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)

霊界物語あらすじ

説明を読む
ここに掲載している霊界物語のあらすじは、東京の望月氏が作成したものです。
まだ作成されていない巻もあります(55~66巻のあたり)
第35巻 海洋万里 戌の巻 を表示しています。
篇題 章題 〔通し章〕 あらすじ 本文
- - - - 本文
- - - -
本巻は三五教の宣伝使黒姫が、大蛇の三公の子分の徳公と、虎若彦の部下の久公を引き連れて荒井峠を越え、途中白狐の出産を介抱し火の国の都へ到着し、迷夢が醒めて実のわが子を見出し、自転倒島に帰って夫婦仲良く錦の宮の神業に奉仕する筋書きを口述したものである。
またナイル河の水源地・スッポンの湖に虎若彦、三公、孫公別、お愛の一行が魔神の征服に向かい、玉治別宣伝使の応援の言霊によって首尾よく目的を達した、面白い物語である。
大正十一年九月十五日より十七日の三日間の口述で完成したもので、筆録者は松村、加藤、北村の三氏によって編纂せられた。
本文
- - - -
人草は天地の神の御水火より現れ出たものであり、生粋の神の御子である。どうして曲であるはずがあろうか。
名位寿富は正しい欲ではあるが、そこに心を砕くことによって執着心という魔が懸り、種々雑多に焦慮し、体主霊従に落ちるのである。
しかし機会を得て神の光に遭い省みれば、元津神に代わって天地の大経綸の奉仕する万物の霊長なのである。
三五教の黒姫も、一度は夫への執着によって魂を抜かれ、海山越えてはるばると迷いに迷っていたが、心に悔悟の花が開き、本来の御霊に還ってより、神の恵みが幸いし、恋しき吾が子に再開することができた。
実子・玉治別とともに喜び勇んで自転倒島へ帰り、夫に巡り合い、麻邇の宝珠の神業に仕えて名を万世に輝かしたというのが、聞くもめでたいこの物語である。
本文
01 00 - 本文
01 01 〔965〕
数ある広大無辺な大宇宙の中でも、吾が宇宙は霊力がすぐれて尊い。上には日月が永久に水火の光を放ちつつ、下界の地球を照らしている。
森羅万象はことごとく、無限絶対無始無終の霊力体の三元を備えて巡っている。太陽・大地・太陰の無限の生命は、神の御言の恵みなのである。
そもそも大地の根源は国常立大御神と豊国主大神の経と緯との水火をもって生成化育の神業を開き給いしものなのである。
至尊至貴なる大元霊、天御中主皇大神の霊徳は、すべての物にあまねく満ちている。高皇産霊神を霊系の祖神となし、神皇産霊神を体系の祖神となしたもうたのである。
霊力体の三元は、幾億万年の年を経ていよいよ宇宙を完成した。われらの宇宙の主宰神は、天には天照大神を称えまつり、国常立大神は地上の主宰と現れまして、金勝要大御神・神素盞嗚大神とは大地の霊力体となって地上の万物に恵みの露をうるおし護らせ給う。神の御国は尊いことである。
このような尊い皇神が造り守る神国に生を受けた人草は、広大無辺のご神徳を朝夕謹んで仰ぎ祀らずにいられようか。神はわれらの霊の祖であり体の祖である。肉体もまた大神からの借り物である。
皇大神が大経綸を遂げるために永久に守り給う天地、その神の機関と生まれた尊く清き精魂を磨き上げ、人と生まれた転職を尽くしまつれよ。
居間から三十五万年前、遠き神代に国治立大神は、神人たちの身魂を治めて美しい神代を造り固めようと根底の国に忍び、いろいろと身を変じて百の神たちを現し、三五教を立て給うた。
三五の神の館を、西のエルサレムと東の自転倒島に配り、神の心そのままを四方に伝える宣伝使を任命したのである。
三五教の宣伝使黒姫は、老いたる身も顧みずに筑紫の島の果てまでも教えを伝えて進んで行く。高山彦の行方を尋ねて、三人の共を連れて火の国の都目指して進んできたが、まだ執着心は晴れやらないというところから、この巻の物語は始まる。
現在の地理学上のアフリカ大陸は、太古には筑紫の島といった。この島は、大山脈をもって火の国、豊の国、筑紫の国、熊襲の国の四つに区画され、島のかなりの部分は大砂漠となっている。
現代の日本国の九州は、国祖国常立之尊が大地を修理個性したもうたとき、アフリカの胞衣として造りたもうたのである。
琉球を竜宮と称すのも、もともとオーストラリアの竜宮島の胞衣として造られたからである。しかし大神は思うところあってこれを葦舟に流して捨てたまい、新たに四国の島を胞衣として造りたもうた。ゆえに神界では四国は竜宮の一つ島と称えられている。丹後沖に浮かぶ冠島もまた、神界では竜宮島と称えられている。
昔の聖地エルサレムは、現在よりももう少し東方にあり、シオン山という霊山によって地中海を両分し、東を竜宮海といった。神代のエルサレムはトルコの東方にあって、アーメニヤと南北相対していたのである。
ヨルダン河は、現在のユーフラテス河がそれである。太古のヨルダン河は、新約聖書のヨルダン河とは別物であり、現代のペルシャ湾が太古の死海であった。大洪水や大震災により、神代の地理は現代と多少変わった点があるのである。
前巻までに、黒姫一行が筑紫の島・熊襲の国の建日の港に上陸し、火の国の都を目指して進んで行く物語を述べておいた。火の国の神司・高国別命は神名を活津彦根命といい、高山彦と名乗っていた。高姫は、高国別命を自分の夫の高山彦だと思っていたのである。
本文
01 02 〔966〕
向日峠の山麓で、侠客・大蛇の三公のために生き埋めにされていたお愛、兼公、孫公は、通りかかった黒姫によって救い出された。そこへお愛の夫である侠客・虎公が子分をともなってやってきて、一同に合流した。
一同は互いの無事を祝し、屋方の村の大蛇の三公の家に向かって進んで行った。お愛は道々、大蛇の三公に捕われ、生き埋めにされたが黒姫に救われた経緯を、宣伝歌にして歌った。
一行は、大蛇の三公を言向け和すべく、言霊戦を挑みに進んで行く。一同はお愛の雄々しさに心勇んで後についていく。
本文
01 03 〔967〕
虎公は、建国別命の館で祝いの祭祀によばれた帰り道に、大蛇の三公の子分たちの一団に襲われ、それを勢いで蹴散らした有様を歌った。そして妻のお愛や妹分のお梅に無事に再会できたことを神と黒姫に感謝した。そして、大蛇の三公一家の面々に神の誠の道を説き明かして救ってやる決意を表明した。
黒姫はこれまでの経緯を歌い、また大蛇の三公を言向け和すこの出立を寿ぎ、言霊戦に向けて一致協力を誓うことを表明した。
本文
01 04 〔968〕
孫公は一行に同道しながら宣伝歌を歌った。孫公は筑紫の島へやってきた経緯を歌い、黒姫一行と別行動をしていたところ、大蛇の三公がお愛とお梅を悩ませているところに出くわし、義侠心から助けに入ったが逆に捕われて生き埋めにされ、黒姫に助け出された出来事を歌った。そして、黒姫に一同を助けたことに慢心するなと気をつけた。
次に兼公が宣伝歌を歌いだした。大蛇の三公の右腕となり悪事を働いてきたが、虎公の留守を狙ってお愛を捕えて強談判をしていたところ、お愛の味方をして三公の怒りを買い自分が生き埋めの憂き目にあったことを歌った。そして大蛇の三公を恨みつつも、神様の大御心にならって赦してやろうと歌った。また、自らの罪滅ぼしをも願った。
一同は早くも、屋形の村の入り口にやってきた。
本文
01 05 〔969〕
黒姫たちの一行は大蛇の三公の館の表門に現れた。門番をしていた者たちは、生き埋めにしたはずの三人の男女が、敵対する虎公と一緒に子分たちや宣伝使も引き連れてやってきたのに肝をつぶし、真っ青な顔をしてぽかんとしている。
兼公は幽霊の真似をして親分の三公や幹部連に知らせるようにとおどかした。門番をしていた子分たちは驚いて、座敷に慌ただしく注進しに行った。兼公は遠慮もなく一同を導いて酒宴の場に乗り込んできた。
与三公、徳公は弱腰を抜かしてうろたえている。兼公は噴き出しそうになるのをこらえて作り声をし、幽霊気取りで恨みを述べて与三公をおどした。与三公は腰が抜けて真っ青な顔で両手を合わせて命乞いをしている。
虎公は吹きだして、幽霊ではないことを明かし、談判に来たことを告げた。徳公のふるえるさまやおかしな応対に、一同は笑い出してしまった。与三公と徳公は、虎公の気合を入れてもらってようやく腰が立つようになった。
そこへ大蛇の三公が、子分たちに酒肴を運ばせてやってきて、一同の前にきちんと座ると歓迎の口上を述べた。三公は、一行の姿が表門に見えただけで自分の身体から蛇が二三匹這い出し、逃げて行ったことを明かした。
三公が蛇を追って行くと、蛇はたちまち三匹の大蛇と変じ、向日峠の方面を指して逃げて行ったという。三公は、自分に憑依していた大蛇がお愛とお梅に悪を致したのだと言い、心から一同に許しを乞うた。
虎公をはじめ黒姫一行は、三五教の教えを普段から奉じているため、三公の詫びを入れて今までの恨みを流し、和気あいあいとして三公の客となった。三公の子分たちも酒宴のやり直しとなり、館はお祭り騒ぎとなってしまった。
三公は賓客のもてなしに全力を尽くしつつ宣伝歌を歌った。これまでに魔神に憑依されて体主霊従の限りを尽くしてきたことを恥じ、お愛に懸想して捕え、生き埋めにしようとしたことを懺悔した。
帰ってきてからは実は心の鬼に責められており、神前に罪を詫びていたところ、木花姫神の化身が現れ、生き埋めにした者たちは神の使いに救い出されてこの館にやってくることを告げられたという。
そして、三五の道に立ち返り今までの行いを改め、彼らを恭しく迎え出て共に手を取り合い、世人のために尽くすように、という託宣を受けたことを明かした。
本文
01 06 〔970〕
黒姫は元気よく、双方の和解を祝す宣伝歌を歌い、一同魂を磨くよう神の道を奨励した。一方徳公は、直前まで三公がお愛を掘り出してまた心変わりをさせようと画策していたことを歌い、兼公を幽霊だと思って腰を抜かしたさまなどを出まかせの滑稽な歌に乗せた。
本文
01 07 〔971〕
八公はおぼつかない有様ながらも歌いだした。もともと武野村の玉公が、黒姫を改心させようと虎公親分を頼んで高山峠に待ち伏せしていたが、黒姫をかえって建日館に案内することになった経緯を歌った。
虎公が三公たちの襲撃やたくらみを神助によって退け、屋方の村に来てみれば、三公は大蛇が抜けて改心していたことを歌い、そのあとは滑稽歌を出まかせに歌って踊り狂った。
高公は、大蛇の三公の子分になった自分の身の上のいきさつを明かし、兼公たちが幽霊の真似をしてやってきて腰を抜かしたさまを滑稽に歌った。
脱線だらけになりウラル教式になってしまっていたが、互いに心を打ち解けためでたい酒宴だからと黒姫や虎公、三公、お愛も今日ばかりは例外だと、子分たちが自由に乱舞するに任せていた。
本文
01 08 〔972〕
ひとしきり酒宴が済み、三公は虎公、お愛、お梅、孫公、黒姫、兼公を自分の居間に誘い、四方山話をしながらくつろいで二次会を始めていた。子分たちもあちこちで思い思いにくつろいでいた。
三公の子分である六公、徳公、高公と、虎公の子分である新公、久公、八公の六人は打ち解けて話をしていた。徳公は、お愛に酒を注いでもらったことを自慢し始めた。
新公は負けずとのろけだすが、久公に実態はぜんぜん違うことを明かされて、言い合いを始めた。そのうちに殴り合いの喧嘩になってしまう。三公の子分たちは、今日はめでたい日だからと止めに入る。
新公は、虎公の古い従者であることから、お愛の方の素性を皆に話し始めた。お愛は実は、天教山から天使として火の国に降った八島別神(建日向別神)の娘・愛子姫であるという。
愛子姫は貴族生活がきらいで、両親の縁談を嫌って家を飛び出してしまった。そして夜道で悪漢に襲われかけていたところへ、新公を共に連れた虎公が出くわし、助けたのだという。
そのとき愛子姫は身分を明かし、身に着けていた宝石・宝玉をお礼にと差し出したが、虎公は頑として断り、どうしてもと愛子姫が差し出した宝を谷川に投げ捨ててしまったという。それで、愛子姫は虎公の気風に惚れこんでしまった。
愛子姫は、身分を隠しお愛と名乗って武野村で奉公して働いていた。そのときに大蛇の三公が口説きにやってきていたのだが、数年後、愛子姫は虎公に申し込んで結婚することになったのだという。
六公と高公は、新公の話から愛子姫を襲った悪漢は自分たちであったことに思い至り、悪いことはできないと悔悟し、改心の情を表した。
新公はさらに、虎公も実は火の国出身の虎転別、のちに豊の国で豊日別命となった神様の総領息子という身分で、虎若という名であることを明かした。
虎若は下女と駆け落ちする途上、病気で女を亡くしてしまった過去を持つという。新公も実は豊日別命の家来であったのが、虎若についてきて今に至っているということを自慢げに話した。
遠くに鳴り響く子の刻の鐘に、徳公はお開きして休もうと一同を促した。
本文
01 09 〔973〕
新公、徳公、久公は酒の機嫌でなんとなく寝られなく、三公の館の庭を歩きながら、よもやま話にふけっている。新公は、お梅は実は虎公の妹ではなく拾い子で、昔黄泉比良坂の戦いで活躍した松・竹・梅の三姉妹の宣伝使の生まれ変わりだとしゃべってしまう。
三公と虎公に一喝された三人は、田圃へ酔い覚ましに行ってしまった。黒姫は、三人の話が本当かどうか、虎公とお梅に確かめる。お梅の身の上話によれば、両親はバラモン教の鬼雲彦に亡き者とされ、自分も悪者にかどわかされていたところを、虎公に助けられたのだという。
孫公は、今度は三公の身の上話に話題を変えた。三公は実はエヂプトの三五教宣伝使・春公とお常の子であったという。父母がスッポンの湖に棲むという大蛇を言向け和しに出かけたが、力及ばず湖にのまれて亡くなってしまったという。
エヂプトの酋長である夏山彦の託宣によれば、三公の両親は自分自身の執着心が凝って大蛇となり、言霊戦に敗れて亡くなったのだから、三公は両親の冥福を祈る生活を送るべきだと諭されたという。
しかし三公は両親の仇を取ろうと、夏山彦の親切な申し出も断ってスッポンの湖に出かけたが、その広大さに力不足を感じ、熊襲の国にやってきて屋方村で侠客をはじめ、密かにスッポンの湖の大蛇退治のために子分を集めていたのだという。
お愛についても素性をしっており、恋慕もあったが、大蛇退治に効験ある霊系であろうという目算もあったのだ、と明かした。そして、悪を退治するために自ら悪人となり悪人の子分を集めていたことが、三五教の教理に背いていたことを告白して懺悔した。
三公の身の上話を聞いて、虎公の発案で早速、虎公、お愛、三公、孫公の四人は、スッポンの湖の大蛇を言向け和すべく出立することになった。
黒姫は火の国へ先を行くことになり、三公と虎公の命で、道案内として徳公と久公が同道することになった。
本文
02 00 - 本文
02 10 〔974〕
虎公、お愛、三公、孫公の四人は、スッポンの湖の大蛇を言向け和すための旅の途上、白山峠で野宿することになった。
虎公、お愛、三公の三人はいびきをかいて寝てしまったが、孫公は一人起きて座していたところ、草を揺らしてかきわけ、一人の女が現れた。女は、助けてほしいことがあるからと孫公を誘う。
孫公が断りを入れると、女は孫公を馬鹿にし始めた。女は孫公が、黒姫の従者として自転倒島からやってきた経緯を知っているようだった。
女は孫公を金縛りにしてしまい、自分は孫公が最前、お愛の寝顔を見て起こした恋の執着心が生んだ化けものだと明かした。
孫公が困惑していると、そこへ恋の執着心を戒める玉治別宣伝使の宣伝歌が聞こえてきた。すると女は煙のように消えてしまった。
そうかと思えば、気が付くと孫公は三人の仲間から四五間離れて寝入ってしまっており、さいぜんの女は夢であったことに気が付いた。
孫公は、夢は神様が玉治別宣伝使を通して気を付かせてくださったものだと悟り、柏手を打って天津祝詞を奏上した。
本文
02 11 〔975〕
孫公が一生懸命祝詞を上げる声に目をさまし、お愛は起き上がってやってきて、孫公に声をかけた。孫公は驚いて、先ほどの夢の戒めから一生懸命、お愛に自分を誘惑しないようにと懇願する。
お愛は孫公の慌てぶりに頬をつねるが、孫公は悪くない気分だと言ってはまた、お愛に捉われないようにと自分に言い聞かせ始め、ちょっとした騒ぎを始める。
虎公も起きて、お愛と二人で孫公をからかうが、孫公は自分がお愛に恋慕していた執着心に思い当り告白した。
お愛は孫公を嫌いだとはっきり愛想つかしを言うことで、孫公は執着心を払い捨てることができた。孫公は柏手をうって大神に感謝の詞を捧げた。
三公は目をさまし、夜明けも近いことを告げた。一同は述懐の歌をそれぞれ歌った。夜が白み始めた。一同は谷川で身を清めて天津祝詞を奏上し、朝食の後白山峠を登り始めた。
孫公は、自分の執着心から化けものを生み出し、玉治別の宣伝歌に助けられた前夜の経緯を歌い、大蛇との言霊戦への決意を新たにした。
本文
02 12 〔976〕
四人は白山峠の山頂に到着した。そこからはスッポンの湖の一部が小さく見えた。三公はそれを見て両親への思いを述懐する。
孫公はふと、一行の中に宣伝使がいないことを不安に言い始めた。孫公と虎公は、宣伝使を選挙で決めようと掛け合いを始める。滑稽なやり取りをした後、虎公は孫公が臨時宣伝使となるべきだと告げる。
孫公は意気が上がり、仮にも宣伝使と認められたからには、神力を発現して大蛇退治の言霊戦に功を現さねばならないと、得意になって勇ましい宣伝歌を歌う。
しかしどこからともなく、中空より玉治別の宣伝歌が聞こえてきた。宣伝歌は、一行が神聖な宣伝使を冗談でも選挙で任命したことを厳しく戒めた。そして、孫公を宣伝使として前に立てようなどという心持を起こした虎公、お愛、三公にも厳しい注意を与えた。
四人は声の出所を求めてあたりの谷底を覗き込んでみたが、人の影も見当たらなかった。一行は白山峠の急坂を降って行く。
本文
02 13 〔977〕
白山峠の頂上で選挙で虎公一行は選挙で孫公を宣伝使・孫公別に任じたが、そのことを玉治別宣伝使の歌で叱責された。孫公別は坂を下りながら歌を歌い、叱責は大蛇の仕業なのか、神の戒めなのか測り兼ねる胸中を明かした。
お愛は孫公別を諭す歌を歌った。三公は、孫公別が頼りないので黒姫を頼んだらよかったと未練を歌った。虎公は、孫公を励ましつつ、大蛇に対する言霊戦に皆を奮い立たせる歌を歌った。
本文
02 14 〔978〕
一行四人がスッポンの湖に着いたときには、日はすでに暮れていた。あたりの恐ろしげな様子に、孫公はすっかり震えあがっていた。
暗夜にもかかわらず湖は泡立ち、波の柱があちこちに立ち始めた。湖中から赤白青黄などの火の玉が数限りなく現れて来た。火の玉にはいやらしい顔がついていて、四人のそばに来て頭上を前後左右に飛び回っていたが、身辺には寄り付いてこなかった。
虎公、三公、お愛はこの様子を泰然として眺めていた。三公がにわか宣伝使になったばかりの孫公に出陣を促すと、孫公は歯をがたがた言わせながら弱音を吐き、三公に先陣を頼み込んだ。
三公からどうしても孫公別宣伝使でなければこの戦いはだめだと急き立てられ、孫公はやせ我慢の震え声で宣伝歌を歌い始めた。最初は震え声だったのが、最後は拍子はずれな大声を張り上げて、自賛の宣伝歌で大蛇に降伏を迫った。
孫公の宣伝歌が終わると、恐ろしい唸り声が四方八方から聞こえだし、烈風が吹き大地は震動した。孫公は樫の木の根株にしがみついてしゃがんで震えてしまった。
三公は烈風の中、樫の木につかまって湖面に向かって宣伝歌を歌い始めた。両親の仇と、大蛇に出て来いと呼ばわり、勝負を挑む勇ましい歌であった。しかし三公の歌によって湖はますます荒れ狂った。
本文
02 15 〔979〕
お愛は簡単に大蛇を神の道に諭す歌を歌った。その言霊に今までの烈風は勢いを減じ、猛獣の叫びも火の玉もおさまってきたが、完全になくなりはしなかった。
虎公はねじり鉢巻きで宣伝歌を歌い言霊を発射した。虎公は大蛇が三公の両親を飲み込んだことの罪を挙げて悔悟を促し諭す歌を歌った。
しかしどうしたことか、湖面の怪物は姿形を変えて数限りなく浮かび上がり、四人の周りに集まって囲んだ。その臭気に四人はあてられて、弱り切ってしまった。
いつの間にか夜は明けて、湖面の怪物は次第に消えていき、太陽が照らし始めたときには怪物は残らず消え失せて、ただ紺碧の波が悠々と漂うのみであった。
四人は池の岸辺に座って昨夜の怪を話し合いながら湖水で禊をなし、天津祝詞を奏上した。すると木の茂みを分けて宣伝使が現れ、玉治別命と名乗った。
四人は玉治別の姿を見て喜び敬意を表した。玉治別は先回りして湖水の岸辺の森林に潜み、昨夜の言霊戦の様子をうかがっていたのであった。玉治別は四人の言霊が大蛇に押され気味であったことを茶化して声をかけた。
玉治別は、四人が火の玉の怪に襲われなかったのは、霊衣が厚く、その威徳におそれて近寄れなかったためだと解説した。また大蛇はまだ恐ろしいたくらみをしていたが、自分が鎮魂したために、山野に潜んでいた大蛇の手下の猛獣たちが逃げ去ったのだと経緯を明かした。
玉治別はにわか宣伝使の孫公をからかい軽く戒めたあと、湖水の浮島に渡って休息し、根本的に大蛇を言向け和そうと、一行の先に立って湖畔をたどって行く。一行は救われた気分で宣伝使の後を付いていった。
本文
02 16 〔980〕
スッポンの湖水には、三個の浮島があって時々刻々湖面をただよっている。玉治別はこの島を引き寄せようと、金扇を開いて打ちあおぎながら差し招いた。
玉治別が島寄せの歌を歌うと、一つの広い大きな松の生い茂った島がこちらにやってきた。玉治別が島に渡ろうとしたとき、どこからともなく声が聞こえてきた。声は、この島は曲津神の変化で、玉治別たちをだまして陥れようとしたのだと、歌で警告した。
そして声は、自分は素盞嗚尊の生御魂・言依別神だと名乗った。そして日の出別神、蚊取別神も一緒に来ていると明かした。
玉治別は拍手再拝して神恩を感謝した。そして寄ってきた松の浮島に対して、大蛇として呼びかけ、神の道への改心を促す生言霊を、声も涼しくうちかけた。
大蛇の身魂も罪をゆるし救い上げようと呼びかける玉治別の歌に、島はぐれんと転覆し、白と赤のダンダラ筋模様の鱗を湖面にさらして湖中深く沈んでいった。
別の浮島がこちらに向かって進んできた。島には黒く細い竹が密生していた。竹の間から美しい女神が三柱現れ、しきりに手招きしている。玉治別は先ほどの松の島に懲りて、鎮魂を修しながら岸辺で見守っていた。竹の島はさらに近づき、女神たちは竹藪を出て岸から玉治別一行と対面した。
玉治別が歌で女神たちに呼びかけ、何者かを問うた。お愛は、女神たちを素盞嗚神の分霊として呼びかけた。女神の一人は松の姫命と名乗り、愛子姫の歌に応えた。次の女神は、愛子姫の父神は天教山に、母神はヒマラヤ山にいると明かし、父母の恩を忘れないようにと諭した。
最後に三人の女神は、孫公に誠の道に進むようにと諭した。また三公には、父母は神国に到達しており、世の中は神の目から見れば仇も味方もないことを諭した。この湖に父母の仇が潜むと思い詰めたのは心の迷いであり、それを晴らすようにと教えた。
女神たちは玉治別に、火の国の都に良くないことの前兆があり、早く進んで行くようにと促した。そして別れを告げると、湖面には島の跡形もなく、波が穏やかにうねっているのみであった。
これより玉治別一行は、この湖の曲津神を基準するべく皇大神に請いのみまつり、一日一夜祈願をこらした。湖水は二つに分かれ、大蛇は美しい女神の姿となって五人の前に現れ、無言のまま感謝の礼をなすと、天上高く登って行った。
玉治別は一行と共に白山峠を戻り、熊襲の国の三公の館に帰ってきた。一夜を明かすと玉治別は、急いで火の国を目指して進んで行った。
本文
03 00 - 本文
03 17 〔981〕
荒井ケ岳の頂上に腰を打ちかけて、黒姫たち一行三人(黒姫・徳公・久公)は四方を見晴らして雑談にふけっていた。徳公はあたりの地理に詳しいのを幸い、黒姫に景色を示しながら筑紫島の地図の解説をしている。
久公にせかされた徳公はくってかかり、二人は喧嘩のような言い争いを始める。黒姫が止めに入ったが、そこへ四五人の男たちがかよわい女を伴って一行の反対側から急坂を登ってきた。
荒井ケ岳は山賊の名所とのことで、黒姫一行と、反対側から熊襲の国へ向かう一行は、お互いに相手を山賊ではないかと思って警戒している。最初はお互いに山賊だと思いあって手荒なことをしないようにと頼み込み、話がかみあわない。
黒姫が見かねて話に入り、ようやくお互いに山賊ではないことがわかり、ほっと胸をなでおろした。
旅の男の中でも勢いがよい鉄公は、黒姫一行が山賊ではないことがわかると途端にほらを吹きだした。黒姫一行の徳公と久公はそれを面白く聞いていたが、鉄公一行はまた急に臆病風に吹かれてか、坂道をっさんに下って去って行った。
本文
03 18 〔982〕
黒姫はあたりの様子を詠み込みつつ、ここまでの旅の述懐の歌を歌った。徳公と久公は、お互いに張り合って滑稽な歌を交わしている。
徳公は一行の先頭に建てられ、これまでの自分の来し方を滑稽な自画自賛の宣伝歌に歌いながら急坂を下って行く。
また、徳公はさらに滑稽な歌をひねりだしながら下って行く。
本文
03 19 〔983〕
一行はやや坂道が緩くなった場所にさしかかり、生き返ったような気分となった。おりしも、道の傍らにこんこんと清水が湧き出ているのを見つけ、三人は天の与えとかわるがわる手にすくって渇きを潤した。
三人が清水とその飲み具合をお互いに批評しあって掛け合いをしていると、一人の男が前にやってきた。男は、自分は夫婦で火の国から熊襲の国へ参拝に行く途中、妻がにわかに産気づいて動けなくなってしまったと告げた。
そして、三人に妻の出産を手伝ってほしいと頼み込んだ。徳公ははしゃぎ、久公は押し黙っている。黒姫は快く、この常助と名乗る男の妻の出産に立ち会い、取り上げ婆の役割をなすことを引き受けた。
黒姫は案内された場所に着くと、早速天津祝詞を上げた。常助の妻は次々に子供を出産し、黒姫は四人もの赤子を取り上げ、無事に出産を終えた。黒姫が産後の注意を常助夫婦に与えると、常助は黒姫に感謝の辞を述べ、夫婦親子どもども大きな白狐の姿となると、どこかへ消えてしまった。
徳公と久公は黒姫をからかうが、黒姫は最初から狐の変化だと見破っていたと答えた。そして、たとえ虎でも狼でも、頼まれたら赤子を取り上げてやるのが神様の道だと二人に諭した。
一行は荒井峠を越えて先へと進んで行く。
本文
03 20 〔984〕
久公は旅路を行きながら、荒井ケ岳の道中を振り返り、黒姫が白狐の赤子を取り上げたことにまだ疑いの念を持ち、歌に歌いながら歩いている。
黒姫は道中、宣伝歌を歌って久公に返した。そしてたとえ畜生であろうとも神様の仁慈に預かる存在であり、お互いに助け合うのが神の道であると説いた。そして久公の迷いを指摘し、自分への疑いを晴らすようにと歌いながら進んで行く。
本文
03 21 〔985〕
(第34巻第16章の続き)一方、房公と芳公は建日の館を出て黒姫の後を追い、険しい山道を登って火の国峠の登り口までやってきた。二人は火の国峠の山頂にたどり着いたが、黒姫の姿は見えなかった。
日が暮れて、二人は峠山頂の木の下で一夜を明かすことにした。二人が横になると、西の方から登ってきた白髪の老人があった。老人は二人が休んでいるそばにやってきて、杖の先でかわるがわる額のあたりをぐいぐいと突いた。
二人は暗がりの中に跳ね起きて、悪態をついている。老人は笑ってとぼけている。二人は怒りを覚えたが、黒姫の行方を知らないかと老人に尋ねた。老人は答えをはぐらかした。
二人がまた、老人がこんな夜中にどこに行くのだと尋ねると、老人は二人の極道息子を迎えに行くのだと答えた。そして芳公と房公の特徴を挙げて極道息子だと言い、二人を雷のような声で怒鳴りたてた。
二人は老人の声におどろいて飛び上がり、闇の中で衝突して火花を散らした。老人は暗闇にぼっと姿を表して、二人の過去の所業を数え上げて責め立てる歌を歌った。歌い終わると老人の姿は煙となって消え失せてしまった。
房公と芳公はこの出来事に恐れおののきながらも、天津祝詞を奏上してここで一夜を明かすことになった。
本文
03 22 〔986〕
火の国の都の高山彦の門前に、房公と芳公はたどり着いて門番に取次を頼んだ。門番の軽公は、神の大道を明らかにした人のみがこの門を通ることができると歌で返した。おかしな歌のやり取りの末、二人は門を開けてもらい中に進み入った。
房公は早速館の受付に、自分たちが三五教の黒姫の共の者であることを告げると、館の主人の高山彦に取り次ぐようにと依頼した。受付の玉公は、当然見ず知らずの二人を奥へ通そうとしない。
二人は、黒姫が高山彦の妻であることから、どうしても会いたいと談判し始めた。玉公は、主人の高山彦はまだ若い年であり、三五教の黒姫と夫婦であるはずがないと笑って取り合わない。
そこへ奥から一弦琴の音色と共に、この家の女主人である高山彦の妻・愛子姫の歌が聞こえてきた。その歌には、自分が神素盞嗚大神の娘であり、夫である高国別は高山彦と名を変えて今に至ることを伝えていた。
房公と芳公はこの歌を聞いて、火の国の神司・高山彦とは本名・高国別であり、黒姫の夫の高山彦とは別人であることに気が付いてきた。
玉公によると、火の国の神館は天教山の八島別夫婦が守っていたが、神命によって天教山に戻り、後には素盞嗚尊が連れてきた、天照大御神の厳の御霊である活津彦根命が就き、素盞嗚尊の娘・愛子姫を妻として治めているのだ、と説明した。
房公と芳公は、黒姫の夫探しの旅がまったくの人違いであることを悟った。二人は玉公にお礼を述べると、このことを黒姫に報せようと一目散に館を飛び出して行った。
本文
03 23 〔987〕
火の国館の門前に、宣伝歌を歌いながらやってきたのは、玉治別であった。玉治別は、黒姫が探していた筑紫の島の高山彦は、別人であることを知っていたようであった。
火の国館の門番・軽公と受付の玉公は、玉治別宣伝使がやってきたと知り、歓迎してさっそく奥殿の愛子姫に合わせるべく、館の重鎮・津軽命に引き合わせた。津軽命は玉治別を導き、愛子姫も玉治別の訪問と聞いて支度を整えている。
玉治別と愛子姫は打ち解けて語り合った。愛子姫の夫・高国別は禊のために桂の滝に出かけており、留守をしていた。玉治別も、自転倒島に流れ着いた愛子姫の妹たちの活躍を、愛子姫に語って聞かせた。
玉治別は自分が孤児の身の上であったことを明かしつつ、火の国館にやってきた目的は、黒姫が主人の高国別を自分の夫の高山別と勘違いしているので、その騒動を収めて黒姫を高山別のいる聖地へ連れて帰るためだと告げた。
そこへ門番の玉公が、黒姫が共を引き連れて門前にやってきたと注進した。津軽命は黒姫を、愛子姫の居間に通すようにと命じた。
本文
03 24 〔988〕
黒姫は玄関口にて愛子姫と歌を交わした。黒姫は、高国別を自分の夫の高山彦だと勘違いしており、夫を奪ったと思い込んで愛子姫を非難し、自分の悲哀の思いを歌に託している。
愛子姫は誤解を解こうと真実を歌で聞かせるが、黒姫は容易に信じず、かえって愛子姫にきつい言葉で歌を歌いかけた。
奥の間にずかずか上がってきた黒姫は、愛子姫の居間に玉治別がいるのをみてますます嵩にかかって、夫のいない間に若い男を引っ張り込んだと愛子姫を中傷する。
玉治別は、高山彦はずっと聖地にいたのであり、それを不憫に思ってはるばる黒姫にそのことを伝えようと筑紫の島まで追って来たのだ、と真心から説き諭した。夫が自転倒島にいると聞いて、初めて黒姫は以外の念に打たれて玉治別に真偽を糾した。
玉治別は、火の国館の主人の姿を描いた絵象を指示し、筑紫の島の高山彦は、黒姫の探す夫とは別人であることを説明した。これで黒姫もようやく自らの勘違いを悟り、愛子姫と玉治別に謝罪をなした。
黒姫は自分の勘違いではるばる遠い筑紫の島までやってきて火の国館を騒がせたことを情けなく思い、神前に懺悔を始めた。その中で、自分に生き別れの息子がいることを明かした。
玉治別は黒姫の懺悔をふと聞いて、生き別れの息子の幼名や捨て子の様子を尋ねた。すると年・名前、体の特徴である痣の形、守り袋までぴったりと一致していることがわかった。
玉治別と黒姫は、お互いに親子であることがわかり、思わぬ親子対面に二人はうれし涙にかきくれた。
黒姫、玉治別、房公、芳公、孫公の五人は自転倒島へ帰ることとなり、愛子姫、久公、徳公にその場で別れを告げて聖地に向けて船出した。その後、黒姫が自転倒島の由良港に着き、秋山別の館に立ち寄り、麻邇の宝珠の御用をすることになるいきさつは、第三十三巻に述べられているとおりである。
本文
- - - - 本文
オニド関係の更新情報は「オニド関係全サイトの更新情報」を見れば全て分かります!
王仁DB (王仁三郎データベース)は飯塚弘明が運営しています。 /出口王仁三郎の著作物を始め、当サイト内にあるデータは基本的にすべて、著作権保護期間が過ぎていますので、どうぞご自由にお使いください。また保護期間内にあるものは、著作権法に触れない範囲で使用しています。それに関しては自己責任でお使いください。/出口王仁三郎の著作物は明治~昭和初期に書かれたものです。現代においては差別用語と見なされる言葉もありますが、当時の時代背景を鑑みてそのままにしてあります。/ 本サイトのデータは「霊界物語ネット」掲載のデータと同じものです。著作権凡例 /データに誤り等を発見したら教えてくれると嬉しいです。
連絡先:【メールアドレス(飯塚弘明)
プライバシーポリシー
(C) 2016-2024 Iizuka Hiroaki